第42回
香港に、行く

なぜか、香港にここのところ縁がある。

1年に3回程度行くだけだし、たいした観光場所もなく、ブランド品などに興味がないため、たいがい『もう来ないよな』と思って帰ることになるのだが、数ヶ月するとまた来ることになってしまう。

町はオイスターソースの臭いで満ちている。暑い地域だから、12月でも半袖。センスのない大量生産の服をみんな来ているので、どいつもこいつも貧乏くさい。たまにブランド服で身をかためたような女性も歩いているが、かえってヘンな気がする。

誰もが薄汚い服装で、露天で、いかがわしいメシをすすっている、こってりと汚れた道路、店内、パチモンのオンパレード。
不衛生な食道。でも、なんか懐かしい。オレがガキのころの日本はこんなだったなあ。

最新映画の海賊版DVDが、露天の八百屋と鶏肉屋の間に、やっぱり露天で売っている。

値段は300円程度。買ってみると、劇場で上映している映画をビデオカメラで撮影してDVDにしたものだった。ピンボケの画像、前の席の客の咳払いまで収録されていた。マトリックス・レボリューションだったけど、キル・ビルも買っておけばよかったかなあ。

町は日本語と広東語と英語がごちゃまぜ。そして堂々と日本語が間違っているが、お構いなしだ。一番笑ったのはレースクイーンのDVDの表紙が「しースクイーソ」になっていたことである。確かに字の形は似ているが。
パイレーツの宇恵さやかちゃんのDVDのタイトルは「見つめてください」が「見つぬてください」になっていた。おしい。

いかがわしい店がいっぱい入っているビルの地下にあるCDショップには、なぜかいつ行っても灰野敬二と突然段ボールとRUINSのCDが新品で置いてある。
中古盤コーナーには、戸川純と吉幾三とブライアン・フェリーが同じ値段で並べてある。

ブラック・サバスの「血まみれの安息日」のCDをそこで買ったら、店長に『お前はブラック・サバスが好きか?このバンドは最高だ!でもな、お前、このアルバムは一番いいやつじゃあない。ファーストとセカンドが最高だ!お前、聞いたことがあるか?』と熱弁を奮われた。

この間オープンした、VCD専門の音楽海賊版屋は、ぼちぼち商品をDVDに切り替えている雰囲気だが、VCDの方が安いのでやめられないような感じだ。DVDじゃなくてVCDってのも香港らしい。
ここで前回買ったピンク・フロイドのプロモ集VCDには、見たことのないシド・バレット在籍時の映像が入っていてびっくりした。

今回はアル・ヤンコヴィックのDVDが正規版の半値で売っていたので購入、ここでも店長にニヤリと頷かれた。日本に帰って見たアル・ヤンコヴィックは最高だった。コピー品だけど。

露天でサングラスを買う。ポリス、と書いてあるブランドもんのパチモンを買ったが、日本に持ってかえって手にとったら、レンズがぽろりと落ちた。右と左のレンズの入っているつなぎ目が、斜めになっていた。レンズをはめ込もうとしたら、パチンという音がしてレンズが元に戻ったのも、何か寂しかった。

香港の友人はいつも夕飯に中華料理をお腹いっぱいどころか3杯分くらいはごちそうしてくれるので、翌日の朝食は食べられず、2時過ぎくらいにブランチを食べることになる。
フードコートに行くと、大きく日本語で「オリエンタルカレー」と看板の出ているブースがあり、そこでチキンカツカレーを注文してしまう。町には吉野家の牛丼もあるが、なんか日本とメニューが違って、えたいのしれないものがてんこもり乗っているようなので、入ったことはない。

もう行かなくていいと思う、香港。

でも年が明けたら、また行くのかな。今回は購入を見送った、グラムロック集のDVD、やっぱり次回行ったら買おう。スティーブ・ハーレィ入ってたし。


JOJO広重 2003.11.19.


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