第48回 「恐山」


青森県下北半島の恐山に行ってきた。

つまりは「恐山」という地名を地図で発見した小学生時代以来、ある種の憧れの土地であった。なんだか、一種の霊場でもあることは子供ながらにも気が付き、そして簡単には行ってはいけないような、つまりは観光などで行くべきではないように考えていた気がする。

40才を過ぎてから、ようやく行く気になったのは、秋に発売する予定の、自分のソロアルバムのジャケット写真を恐山で撮ろうと考えたからである。

7月の上旬、結局は恐山、佐井村、仏ヶ浦に行ってきて、写真も撮ってきた。

佐井は斎に通じる。斎とは巫女のことである。自分の好きなシンガーである佐井好子さんとも印象が重なって、この佐井村にも行ってみた。

仏ヶ浦は奇岩怪石が連なる、下北半島の、これまた奇所である。

まあ、どんな写真を撮ってきたかは、秋までのお楽しみということで。

ただ、霊的な、いわゆる怖い目にはあわなかった。
唯一、恐山から佐井村に車で移動した時、下北半島の外周をまわらず、山の中の道を使って、下北半島を横断したのだが、途中の道が、まるっきり舗装されていない山道になり、その道中が怖かったといえば怖かった。道はデコボコで水たまりだらけ、崖や川辺の連続、当然ながら人も車も通らない。携帯も通じない。つまりは山道を車でドタバタと通り抜けたのである。

そしてなぜこんな山の中に?と思われる古い吊り橋(なんのためにあるのかは不明)を途中で発見し、その写真をとったが、下北半島旅行中に200枚以上の写真をとった中で、心霊写真的なものはその吊り橋の写真2枚のみであった。

佐井村にぬける少し前に、対向車も通行人もまるで通らないその山道の中途で、1度だけ自転車に乗った中年の男性とすれ違った。その男性の顔が、友川かずきさんにそっくりだった。驚いた。

いつかまた、下北半島には行ってみたい。しかし、あの下北半島を横断した山道は、もう一生の間には二度と通らないだろう。
通り抜けてから、地図を見てみたら、自分たちが通ってきた道の途中は「てんぐ山」と記載されていた。
ちょっと背筋が寒くなった。


JOJO広重 2004.7.16


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