vol.5 とりつかれる、もしくは呼ばれている。

例えば内田という男に付きまとわれて困っていた友人が、コンビニに入ったら店員の名前が内田だったり、自転車に乗っていたら車にぶつかりかけて、その車の車体に内田塗装店の名があったり、新聞の勧誘員の名前が内田だったり、テレビのニュースで誘拐犯の名前が内田だったり、営業先の担当が替わって新しい担当者の名前が内田だったりして何となく辟易としていて、気分を変えようと合コンに出かけたら、ちょっといいなと思った男が内田有紀のファンだったりしてやりきれない気分になったことがあった。

というような話を聞いたことがある。

また別の友人が、どこぞの国の山奥にあるデカい滝の話を友達から聞いて、ホウそりゃぜひ訪れてみたいものだと思っていたら、その数日後にテレビの旅番組で紹介されていたり、何かのCMの撮影地に使われていたり、新聞の海外トピックスでその国の首相が国際会議に出席する記事を読んだり、新しい顧客が以前その国に滞在していたことのある人だったりした。

という話も聞いたことがある。

旅行中、何度か変えた宿の部屋番号がすべて407だったという友人もいた。

偶然といえば偶然だけど、何かにとりつかれている、もしくは呼ばれているような気がしないでもない。

どうせとりつかれるなら石油王がいい。

テレビを見ても新聞を見ても石油王が目に飛び込んできたり、会社で海外石油取引に関する資料翻訳の文字カウントを頼まれたり、世界ふしぎ発見でエジプト砂漠の不思議がテーマだったり、翌日の世界うるるん滞在記が、イエメン砂漠の摩天楼に出会った…だったりして、ああ、石油か。砂漠か。いいなぁ。

砂漠でらくだに乗りたいなぁ。と思った途端に雑誌でエミレーツ航空で行くアラビアンナイトの旅プレゼントとか発見して、応募したら当選しちゃって本当に砂漠でらくだに乗れたりしたいし、その旅行中、何度か変えた宿でいつも同じ石油王と再会して、これも何かのご縁ですねと油田のひとつでもプレゼントされてみたいものである。アッラーアクバル。

2003/4/24


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