来客列伝 #1                    林直人さん と 町田町蔵さん(現 町田康)   

 
フジヤマをオープンする前から面識のあった林君は、当時、YOU(現ラフィンノーズのチャーミー)などのシングルをリリースしていたアンバランスレコードという自主レーベルに一区切りつけて、非常階段のJOJO広重とともにアルケミーレコードをプロデューサー的役割で立ち上げた。関西の純な音楽は彼の尽力無しには語れない。現在ある全てのインディーは彼あればこそ、といってもいい。私は、関西のインディーを語る、いろんな書物のなかで林君の名前が出てこないものは信用しない事にしている。

その彼はINUのオリジナルギターリストである。現在、自称、元パンク歌手を謳っている町田康がヴォーカルのあの素晴らしいバンド、イヌ。林君は別にアウシュヴィッツという、今でいう歌もの的バンドのはしりをすでにやっていた、彼のヴォーカルは芯があり、ダメさ加減も見せる実に泣かせる男ぽいものである。ダメな人種が男なんだよね、これまた。

町田町蔵といっていた頃、イヌのレコード発売に併せてフジヤマに2人で遊びに来てくれた。その後、町蔵は北澤組のライブチラシを持って来てくれたりしたけど、あれよあれよという間に作家になって、ちっとも貧乏くさくなくなって、名前も康という本名に戻して今や人気作家。なんだか、文体のリズムが音楽してるようで、大好きです。元パンク歌手という、照れた自称を名乗るに充分過ぎる面目躍如である。

そして、林君である。音楽活動を再開する連絡が入る。私はいてもたってもいられない。きっと休んでいた訳でもないと思う。生活は音楽なのだから。   

text 渡辺正     2001/3/31

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