第155回
”格好良いロック その1” の巻


格好良い、ロックの話しをしましょう。
それも、ハードロックですよ。

みんなが知っている、格好良いハードロックは AC/DC ですか?
Led Zeppelin ですか?
もっと、つうな人は何なんでしょうか?
FREE かなあ? 
近年の流行は Black Sabbath かな?
ちょい悪系で Aerosmith かな?
実際のところ、みんなが格好良いと思うハードロックが分からないのです。

だいたい、バンドなんて浮気性なので、アルバム毎に色合いが違うと思う。
だから、そのバンドの全作品がハードロックじゃなくても、一枚だけもの凄く格好良いハードロックの場合もあるので、そういったバンドは結構忘れられちゃうんです。

だから、私が格好良いと思うハードロックのアルバムを書いちゃうのですよ。

最初は、個人的に大好きな SPOOKY TOOTH のセカンドアルバム『SPOOKY TWO』です。
なにしろ、冒頭のドラムスの音で、ノックアウトです。
ヘヴィーなハードロックの典型です。
FREEの「Alright Now」よりも、ずっしりと重くて何とも云い難い格好よさがあります。
この、イントロとタメを張るのは Chicken Shack の 『Imagination Lady』 かな。
(このアルバムも、後日紹介しましょう。)

この、格好いいドラムスの音に続いてヴォーカルの叫び声にのって頭を振り回していると、重爆弾のような、キーボードとベースが入り、ヴォーカル突入。
そして、このバンドの一番格好良いギターと、もう1台のキーボード投入。
ベースのアクセントの格好よさといったら、絶品もの。
ギターのねちっこいリフも最高。
2曲目と3曲目はブリティシュの醍醐味。
彼等ならではの、ちょっとサイケを引きずったポップな曲。

このバンドは、ヴォーカルが2人いるため、いろいろな印象をもつことができます。

後に、大ヒット『夢織人』を出すアメリカ人の Gary Wright と、いかにもイギリスのロック・ヴォーカリスト然とした、Mike Harrison の対照的な歌い方はヴォーカルをやっていると、惹かれるものがあります。
アルバムのA面ラスト「Evil Woman」は、ハードロックというか現在のドゥーム系やストーナー系やメタル系、それもダウナーな感覚をもったバンドが描き出そうとする音の原型が詰まっています。
リフで、ガンガン押しつぶしてきます。
先程書いたヴォーカル2人が交互に攻撃してくる様は、ヘビーそのもの。
こういったヴォーカルの入れ方をするバンドが、最近それほどいないので、びっくりすること請け合いです。
ギターのねちっこさも、この曲で最大限に発揮されます。
各パートに引き継ぐときの勢いも、バンドならではの整合感に満ちているにもかかわらず、スリリングで、駆け引きが見えるような音づくり。
腰振って、踊りまくりです。
B面に移ると、独特なヘヴィー感覚。

Islandレコードから出ているだけあって、1969年の重さがにじみ出ています。

Jethro Tull 等、レーベルメイトがもっていたヘヴィーかつメロディックなところがあります。
この、ブリティシュ独特の劇的な展開は Uriah Heep の初期にも通じるものがあるでしょう。
次の曲を受け入れることができるか出来ないかで、このアルバムに対する評価が変わるでしょう。
この曲は、シングルとしてリリースしただけあり、ポップですがギターの表情が面白く、ドラムスも、後のパブロック〜パンクに通じるノリを出しているので、少しだけアルバムの中で表情が異なります。

そして、次の曲は Judas Priest がカバーした「Better By You ,Better Than Me」

ギターのリフは、Juicy Lucy のようで絶妙なヘヴィー加減があります。
そのうえ、ボーカルが激情型で最高。

アルバム最後の曲は、最初は何となくアメリカンな感じで始まるけど、アコースティック・ギターの音とともに、いきなりブリティッシュに転換。
徐々に重くなっていくから、知らぬ間にどっぷりとハードロックの世界に入っている。
ホーンの入り方は、John Mayallの作品のようで、さりげなく格好良いです。

こうして、聴いていくと、このアルバムいろいろな色合いがあって、非常に面白い。

ドイツのレーベルから出ている再発CDは、シングル曲も入っているのでお勧めです。
アメリカ盤のCDは、大音量で聴くと音像がよく見えてきますが、これならばレコード盤で聴いた方が楽しいかな。

因に、このバンドのギターは後に Mott The Hoople の黄金期を作ります。
そして、ベースは Humble Pie へ行きます。
いかしたドラムを叩いてる人は、The Only Ones のドラムになります。

凄い人ばかりのいるバンドなのに、なぜか日本ではあまり話題にならない不思議なバンドなのですが、ブリティシュ・ロックファンには定番中の定番のバンドなので、もし聴いたことが無いひとは、この 『SPOOKY TWO』 と一緒にサイケなジャケットのファースト 『IT'S ALL ABOUT』 もお勧めです。

「Tabacco Road」 や 「Society's Child」 のヘヴィーさは桁違いです。

両方とも、ドイツの再発レーベルから出ているデジパック仕様のものが一番いいでしょう。
解説も、元メロディー・メイカーで記事を書いていた Chris Welch が書いているので、読みながら音を聴いていくと、楽しむことが出来ます。

さて、次は何にしようかな?

2009/6/28