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第191回
”愛と戦いのイギリス文化史” の巻




『愛と戦いのイギリス文化史』(慶應義塾大学出版会)って云う、本を読んでいます。

1900年〜1950年と1951年〜2010年の2冊から成っています。
大学生を対象とした教科書で、20世紀のイギリス文化史を,知ることが出来て興味深いです。

最初に1900年〜1950年を読んでいたんですが、二つの大きな戦争(第一次世界大戦と第二次世界大戦)を含んだ時期ということもあり、アメリカの同時期を描いた『アプピリン・エイジ』と比較してしまいそうですが、内容がイギリス文化に特化しているので、イギリスのロックを聴いていくうえでバックグラウンドが解って面白いです。

この本を読んでいる時に、テレビでBBCが2009年に作った『スモール・アイランド』という、ジャマイカ移民の番組を観て、慌てて1951年〜2010年のほうを読みだした次第です。
(原作は、2004年に出版された本ですが、未読です)

個人的に1951年〜2010年は、ザ・ビートルズ登場以降、子供ながら ”イギリスかぶれ”だったので、1970年以降のいろいろな出来事を日本にいながらニュース映像、新聞記事、雑誌記事で何となく解ったつもりだったところを、いろいろな目線で紹介し説明してくれるので
”あ、そうだったのか” と思うことしきりです。

もちろん、パンクについても考察もあって面白いです。

短い文章でパンクを考察することは難しいのですが、切り込み方を音楽とファッション・人種というポイントで絞っているので、今の若い人に理解しやすい内容になっています。

ファンジンと自主制作といった、DIYの精神をこの時代に付け加えることが出来、楽しくイギリスの文化に親しむことが出来るのではないかと、ちょっとだけ考えました。
パンクは、既存の発想からもう一つ別(オルタナティブ)なものを考えるきっかけを与えた意味は大きいと思っているから、その辺りに言及して欲しかったな。

音楽の面だけで云えば、NMEの記事を中心に進めているけど、1990年代初頭までは、SOUNDS や Melody Maker といった音楽紙の影響力が大きかったから、複眼的に視てもらえるとより面白かったのではないかとも考えてしまいました。

もっとも、イギリス文化史の教科書なので、イギリスの音楽が文化史のなかで大きなウエイトを占めていることが確認できて、見識が広まったというところです。

ロックを聴くときに、楽しみ方を増やすことが出来ることは楽しいです。

なにしろ、”大人のロックファン” の間であまり話題にならない1980年代以降の社会情勢と文化が解りやすく読むことが出来るため、ロックのディスク・ガイドと一緒にこの本があると面白く音を聴けますよ。

2012/6/25