第197回
”新しいもの”の巻



新しいものを好きになるのには、もの凄くパワーが必要だ。
だから多くの人は、かつて好きだったものにその影を追いかけ、類似したもので疑似体験をする。
景気回復の切り札、バブル再熱現象なんてその際たるものだろうなあ。


今、新しいロックを追っかける人が少ないと聞く。
日本だけではなく、市場は縮小していると数字が示しているらしい。
少子高齢化の影響なのか?


まあ、どうでもいいや!
ロックを好きな人が減っているなんて、全く考えていないのだから。


新人バンドは毎年数多く現れている。
好みはあるが、枠を取っ払うと多様な音楽が生活に密着している。
マイナーなポスト・ロックが、テレビから娯楽番組のBGMで流れているのだ。


とは言っても、新しいロックを追っかけないなんて、もったいない。
いつまでも、1970年代までのロックばかり聞いていても、楽しくないじゃん。


個人的に思うのは、ここ日本でロックを取り巻く状況は、懐古的すぎるんじゃないかな。
今、海外のレーベルの再発は1990年代に突入しているのに、日本は面白い程1970年代まで、それもパンク登場前に固執していると思えてしょうがない。
2013年の”名盤探索”は、1967年〜1974年で終わっている。
あの、憎きパンクさえ無ければ、芳醇な音楽がもっと実りの多いものになっていたはずだ!と。


それにしても、どうしてここまでパンクを無視するのかなあ?
パンクとサイケデリックが一番面白いのに、不思議だなあ。

NEW WAVEじゃなくて、PUNKだよ。

PUNK〜POST PUNK〜HARD CORE〜POST HARD CORE
この流れで、きっちり音楽を押さえていかないと、世界のロックの主流は見えなくなってしまう。
この辺りを、しっかりとまとめないといけないな。


前置きが長くなってしまった。
今のロックだ。
メインストリームのロックだ。

The1975の話だ。

巨大ロックフェスティバルのメインじゃなくサブステージで昼間にやっている、10年後にどうなっているのか知ったこっちゃない、活きの良いバンドだ。


久しぶりに、イギリスにまた行ってきました。
目的は、レディング・フェスティバルを観に行くこと。

このフェスティバル、なんやかんや言っても、ロックのフェスティバルの元祖ですから。
15年ぶりに行った会場の雰囲気は、以前よりも大型化していてちょっとビックリ。

今回は、宿泊場所もレディングの街中に取って、朝一番から夜の最後まで観れるように万全の体制を整えました。
初日から、観てみたいバンドばかりで、会場に入って10ポンド(約1,500円)を出しプログラムを購入しタイムテーブルを確認すると、観たいバンドの演奏時間がバッティングしていることが判明。
二兎を追うもの一兎を得ずにならないように、選択と集中に心がけることにしました。
メインステージに出るような大物はDEFTONESを除いてこの時点で切り捨てです。


2013年のレディング・フェスティバルで一番の話題をかっさらったのは、何と言ってもThe 1975。
あまりにも凄まじい大混雑で、いったい何が起こっているんだと。


8月24日の午後3時過ぎからその予兆は起こっていました。
"Festival Republic Stage"という、1500人で満員になるような、一番小さいテントにインディー・ロックの2人組Drenge終了と同時に多くの人が押し掛けてきました。
8月にファーストアルバム『Where The Heaven Are We』をリリースした話題のバンドSwim Deepが次のバンドだったのです。

The Herdの頃のPeter Flamptonを思い出させるような雰囲気のあるAustin Williams(Vo,Gt)を擁する4人組目当ての女の子(高校生くらい)が次から次へとテントに入って来ました。

先程までゆとりのあったテント内の温度が一気に上昇していきます。

Swim Deepのライブが始まると、さらに人口密度が増していく。
シンディー・ローパーの「Girls Just Wanna Have Fun」のカバーで女の子たちはジャンプして大はしゃぎ。
最後の曲「King City」で興奮はピークに達する。
でもそれは、次のバンドへの導火線に火をつけようとする前段階にすぎなかった。
Swim Deepの約30分にわたるライブ終了。

女の子達はテントから出て行くだろうと想像していたら、何と終了と同時に彼女達がグイグイとステージ前に押し掛けてくるじゃないか。
もう身動きとれない。
Drenge目当てで最前列にいた、いかにもインディー・ロック好きそうな、おじさん・おばさんと一緒に、女の子の熱気に圧倒されている。

ステージ前の異様な光景に、このテントのステージ監督が”大混雑しているから一歩さがって下さい”とアナウンスするものの、その効果は一瞬で終了。
何事がおこっているのか想像はつくが、ステージ前から後ろを見回しても、ひとひと人で見渡す限り女の子ばかり。
テントの外まで多くの人だかりが出来ている。
これはただ事じゃないなと思っていたら、警備に応援が登場。

いきなり3倍の警備員が。

緊張している雰囲気が伝わって来る。
マンチェスターをベースに活動しているThe 1975が次のバンドだ。

彼らを知ったのは、BBCラジオ1のHuw Stephensの番組。
U2、Simple Minds、Deacon Blueといった1980年代のUK New Waveのメインストリームのバンドの音を彷彿させながら、3rdアルバム以降のNoah & The WhaleやBombay Bicycle Clubの『A Different Kind Of Fix』に通ずる2000年代のリズム感覚とポップさを兼ね備えたバンドと言う予備知識のため、てっきりインディー・ロックと思い込んでいた。

しかし、女の子達に押しつぶされそうになっている状況から、”これはただのインディー・ロックじゃないなあ”、などとおぼろげに考えだした。
普段は、ジャスティン・ビーバーやワン・ダイレクションに熱狂しているような子達かもしれない。
たとえが古すぎて伝わらないかもしれないが、Bay City RollersやThe Beatlesに熱狂するファンのようだ。

午後4時30分、ステージに4人のメンバーが登場。
ステージ向かって左はギター。
右はベース。
真ん中にヴォーカル・ギター。
後ろにドラムス。
メンバーのファッションは、Swim Deepと比べるといかにもインディーなロックバンドだ。

ヴーカル・ギターのMatt Healyのへアースタイルはサイドを切った長髪だし、ステージ上にキーボードを配置している。
どことなく同郷のEverything EverythingやDutch Unclesのセッティングに似ている。

女の子達の熱狂的な声が飛び交う中、インディー・ロックぽい曲でライブがスタート。
ギュウギュウと女の子達が前に詰めて来る。
キャッチーな曲「The City」が始まると、みんな手を振り上げ大合唱が始まった。
ここから、大合唱と熱狂的な歓声がノンストップで続く。

ヒットした「Chocolate」や「Sex」が始まると、ステージ前にいるにもかかわらず、飛び跳ねながら歌う観客の大合唱で音がかき消されるような凄まじさ。

イギリスでライブを観たいと思うのは、この大合唱があるからだ。
日本で腕を組んで観ているのとは違い、何しろ楽しい。
アイドルのライブに行く人と同じなのかもしれないが、これだけは経験しないと分からない楽しさだ。


ファーストアルバムのリリースで一気に人気が爆発するんだろうな。
セカンドアルバムの時にどうなっているのか、そんなことはどうでもいい。


満足な顔をしてテントを出て行く多くのティーンの後を、押しつぶされていたインディー・ロック好きなおじさん・おばさんが、汗だくになって出て行くのであった。

もちろんニコニコして。



今回のライブが最後になるかもしれないから、見ておかないといけないバンドよりも、やっぱりフレッシュで活きの良いバンドを見る喜びを忘れないようにしないといけないね。
来年は、もう違うバンドになっている可能性が高いんだから。



付録
Sound Systemの巻


なんという、ていたらくな有り様だ。

ロックを聴き始めた40数年前、ジャズやクラシック音楽のマニアが高額なボックスセットを買うのを見て、”アホか!”と思っていた。

かつて”私は既にこのアルバムを持っているのだが、今回のボックスには特典がついているからね”なんて話を横で聞いて、こんな風になりたくないと、強く思っていた。

しかし今回。何とも情けない。

いくら、The Clashの音楽を聴きたいだけなのにとは言え、大枚をはたいてしまった。

はっきり言って、オリジナルのアルバムは総て持っている。
もちろん、シングル盤も。
CDになった物も、全部手元にある。
特典が欲しくて、金を出した。

それも、DEMO音源の正式リリースに。

だから、”こんな風になりたくない”になってしまった。

この『Sound System』を購入するお金で、The 1975やHaimを始めとする、今のバンドのファーストアルバムやシングルをすぐに買えたのに。

恥ずかしい限りだ。

私は、基本的にマニアだけれど、コレクターではない。
同じレコードを、マトリックス番号でチェックしたりはしない。
あまりに聴きすぎて、ちょっと忍びない状態になってしまったレコードを買い換えることがある程度だ。
だから、我が家のレコード棚は買った順に様々なレコードが並んでいて、このアルバムを買ったときは、一緒にこのアルバムを聴いていたことが解るようになっている。
例外的に再発盤を買う程度だ。
それも、好きなバンドの音は”未発表”のものだったり、”ラジオセッション”のものとか、聴きたくて入手してしまう。
聴きたいが先にある間、まだ”好き”なんだなあと、自分を慰めているのでした。


The Clashの話だ。
どうしても、再発の話は生きている人間が中心になって進むので、これから”Mick Jones & The Clash”という話になっていくと思う。

どうしようもない違和感を感じるのだが、これが現実だ。

しかし、私にとってThe ClashはJoeが真ん中なのだ。

だから、The Clashの生き様を知るには、やっぱり『Cut The Crap』を無視してはいけないと、最近思っている。

最近出た、写真集にも音源集にも最後のアルバム『Cut The Crap』は無視されている。
ボロボロになって、ケチョンケチョンに貶された、このアルバムにMick Jonesの名前は無い。
バンドを辞めさせられた人間が、話の中心にいるのは、おかしい。

最後まで看取った奴にしか、そのバンドを語ることは難しいだろう。

それこそ、The ClashをクビになったMick Jonesの代わりに、元The CortinasのNick SheppardにThe Clash最後の頃をいろいろ語って欲しいと思ってしまうのだ。
本当は、Paul SimononがJoeの代わりの役を買ってくれれば、一番良いのだけどね。


話がだんだん逸れている。
『Sound System』に戻そう。


アルバムはみんな持っているから、付録品が今回のメインになると思う。
BOXを開けると、「Service Manual」なる、小冊子が、CDのアルバムサイズで入っている。
10カ国語で記されていて、日本語も勿論ある。マニュアルに番号がふってあり、1から22まである。
それを、見ながら一つ一つ確認することにしよう。


おそらくこのBOXを買う人が最も欲しいのは”The Armagideon TIMES”だと思う。
これは、3冊。マニュアル番号で13、14、15。

London Calling以降の写真がメインになるので、好きな人にはたまらないだろうな。
特別版の記事は、現時点のしがらみを考えると妥当な人選かな。
メンバーが付き合った女の人からコメントを貰えたらもっと下世話で面白かったんだろうけどね。
マニュアル番号16、17、18のステッカーはセカンドアルバムの字体のTHE CLASHとRehearsalsのバンパー・ステッカー各一枚とステッカーセットが一枚。
これらを入れるための、ピンクのファイルケースは12番。

バッジ5個とIDタグの9番は、ちょっと粗悪だな。
これじゃあ、選挙のバッジだ。
1970年代のBetter Budgeの風合いが欲しかった。

10番はステッカー3枚入り。
これはかわいい。

ライザー(19番)、筒(20番)とポスター(21番)は、”こんなもんか”で許しておこう。

11番の文庫本は”The Future Is Unwritten”というタイトルで、ニヤリとしてしまう。
そうそう、マニュアルは8番。入れ物のBOXが22番。
上記で、8〜22。

DVDが7番。
DVDの映像は、悲しいかなThe Clashファンとして、良いに決まっているとしか言えない。
アメリカ進出前のThe Clashは、大好きなのだ。


正規音源は『Cut The Crap』を除く5枚目まで。
1、2、3、4、5。
1番の音は、1977年特有のギスギスした音から、いかにもMick Jonesが好きそうな、Classic Rock Magazineを購読する人たち向けの程よいロック感覚を持った音になっている。

2番のセカンドアルバムは、ハードロックテイストが若干減り、オルタナ系のロック感覚が付加されている。

3、4、5番のアルバムは聴き込んでいないのでコメントできませんが、年寄りに優しい音になっているような気がする。


CDエクストラが6番。

ここにDemo音源が!
Demo音源も、『Clash On Broawdway』に収録された音より、聞きやすい。


これで、1〜22全部。


楽しみBOXとしてマニュアルに書いてある、

”それはあなた次第です”

を受け止めることにしよう。

2013/10/23

  原爆のライブ予定

今年、東京(関東)は9月15日で終わりです。
10月から、関西方面が多くなります。
11月に京大西部講堂、
来年1月に「お年玉GIG」を名古屋クアトロでやるので注目!