第198回
生きながらパンクに葬られの巻


バンドなんていい加減なもので、ライブに行かなかったりすると次の瞬間に解散なんて言うことがよくある。
ライブの予定が入っているから、”今度でいいや”なんて思っていると、よくしっぺ返しにあう。

その上、不測の事態と言うやつもあるから、全くもって何とも言えない。


bloodthirsty butchers の吉村秀樹君が2013年5月27日に夭折したことは、多くの人が知っている通りだ。


私は、”非常階段のXX階段シリーズについて本にするからお話ししましょう”と名古屋でジョジョ、エディと話をした帰り道、もう少しで豊田市という車の中で訃報の電話を受けた。

冗談を言ってくるような相手ではないのと、電話の向こうの空気が重く沈んでいることから、本当の話であることは確かだった。

自宅について再度電話。

実感なし。

それから当分の間、ブッチャーズの曲が頭の中で鳴っているものの、何となくブッチャーズを聴く気分になれなかった。
6月にフィーバーで行われた、”吉村秀樹会”に出向き皆に会い、やっと現実を身体に感じた。


ようちゃん(吉村君のことを私はこのように呼んでいる)の最新作が遂に世に出る。

今年2月に名古屋で一緒にやった時に、”リリースずいぶん先になるんですけど”と言いながら”アルバム楽しみにして下さい”と教えられた作品だ。

ライブで既に聴いたことのある曲も入っている、進行形のバンドの音が手許に届いた。
『youth (青春)』と言うタイトルだ。

一瞬 ”Lostprophetsか?” と思うような活きの良いドラムの音でアルバムはスタートする。
活力に満ちている曲のタイトルが「レクイエム」だなんて。

ここから、ブッチャーズの”パンク魂”炸裂。

爆音で怪しげなコードを奏でるエレキ・ギターと蛇のようにクネクネ唸るベース。
ヴォーカルのコーラス部分の絶妙さ。
乾いたドラムの音は、身体にビシビシ鞭打ってくるようだ。

激動と激動がぶつかり合うギターの音は、尋常じゃない。

比較対象として瞬間的に頭の中を駆け巡ったのは Superchank の 『On The Mouth』 と Comeの 『Eleven Eleven』 の2枚。

聴き進むうちに、気付かされた。
このアルバム、Doors の『LA Woman』のような肌触りだ。

いつも通りのようちゃんの声が、深いのだ。
なんか、Jim Morrison のヴォーカルみたいだ。

このアルバム、音は解りやすい、言葉も明瞭だ。
それなのに、聴き返す都度、新しい発見があるから楽しい。

アルバムタイトル『youth(青春)』がぴったりの瑞々しさだ。



日本だけでなく、パンク・ロックと言うと紋切り型のガラパゴス化したロックの事ばかり指すようになっているが、私の考えるパンク・ロックは常に最新型で進行形でないといけない。

何を持って最新型なのか。

簡単だ、過去をなぞるのではなく、過去を培って創造して行くこと。
要するにノスタルジー、懐古的にならない音こそパンク・ロックなのだ。

新しい発見がそこにあるか、無いか、その判断だけだ。



『youth(青春)』は新しい発見がある。
だからこのアルバムはパンク・ロックだ。


"やるしかないのさ"(懲りない面々)


このアルバムを一通り聴いて、いつものように ”ようちゃんに感想を述べなければ” と思ったことを付け加えておく。

2013/11/13

  原爆のライブ予定

12月7日(土)大阪 BASSO
【BANANA HALL 復活記念ライブ】
共演:THE BALLAD、首振りDOLLS、妄想ジャングルジム
Open17:00/ Start17:30 
Adv2500円/Door3000円(D別)

2014年
1月18日(土)名古屋 クラブクアトロ
お年玉GIG 2014 原爆BiS階段
共:非常階段、BiS
開場 17:30 /開場 18:30
前売り 3500円(別途ドリンク代 500円)

■2月22日に高円寺Highでアレルギーと一緒にやります。