第210回
The Tapestry Of Delights の巻


イギリスのロックを好きな人。それもパンクが登場する前のブリティッシュ・ロックが好きな人は、40代後半より年齢が上の人に多いと思う。
まあまあお金に余裕がある年齢の”大人のロック”ファンは、オリジナルのLPレコード収集をしている人が多い。


東京の中古レコード店で、一枚何十万円もするようなレコードが飾ってあることが時々あるので、腰を抜かしそうになることがある。

人気のあるレーベルと言えば、渦巻きレーベルのVirtigo盤。

カタログナンバーで6360シリーズの物なんて、必ず万円単位の値札がついている。
他にも、NeonやピンクIslandは結構値段の高いレコードが多い。


そんな人たちが愛読しているのが、日本の月刊誌ならば、”Strange Days”と”レコード・コレクターズ”だろう。
また、1970年代にブロンズ社から出版された、『ブリティッシュ・ロック大名鑑』は、必携の愛読書だろう。
”ロック黎明期からニュー・ウェイヴまで”、”750項目5000名を網羅”したこの本を隅から隅まで読んで、全部覚えているような人でなければ、ブリティッシュ・ロック・マニアと呼んで貰えないような時期さえあったのだから。

この『ブリティッシュ・ロック大名鑑』の巻末についていた、”リリースリスト”というレーベル毎のカタログが、当時マニアの間で話題になったもんだ。
Virgin、Charisma、Vertigo、Harvest、Dawn、Chrysalis、Stiffといったレーベルのレコード番号とバンド名及びタイトルは、レコード収集の参考にした人も多いはず。


1990年になると、『ブリティッシュ・ロック大名鑑』だけではもの足らないようなコレクターが多くいたと思う。
そこで出て来たのが、”レコード・コレクターズ”増刊の『英国ロックの深い森』だ。
パンクを境目に青版(1955〜1975)と赤版(1976〜1990)が2000年代に入って登場。


だけど、本家イギリスだって、コレクターとマニアが日本とは桁違いに多く居るはずだから、ロック辞典は数多く発行されていた。

そんな中で、決定版と云うべき本が1995年に出て来た。

総ページ数616ページの『The Tapestry Of Delights』だ。

なんたって、”総合ガイド”なのだ。
それも、1963〜1976迄の、ブリティッシュ・ビート、リズム&ブルーズ、サイケデリック、プログレッシブといったブリティッシュ・ミュージックを対象にした、”パンク期”以前の英国ロックをくまなくガイドする辞書だ。

インターネット全盛前夜に出たこの本。その情報量の膨大さに、ただただ驚き、読みあさっていたものだ。
何が凄いかって、シングル盤を一枚だけしかリリースしていないようなバンド迄載っているんだから。
おそらく、英国ロックをチョットかじって、マニアのような物知り顔をしたいような人は、この本を読めば完璧だ。


でも、マニアの国イギリスだけあって、新たな情報手に入ることもあるみたいで、10年が経った2006年に改訂版が登場。
内容も、1.5倍の978ページに大幅増加。

最初に出た時から約20年経った今、情報が多くなりすぎたのか2014年もうビックリの2冊に分かれて増補版が出て来た。
A-Kが1020ページ、L-Zが1060ページにまで増えて、完全に辞書状態。

おそらく、ここに載っていないようなバンドのレコードを手に入れることは難しいのではないかと思える程、凄まじい。
その情報も、初版から比べていくと、結構マメに追記されているから、脅威だ。


例えば、Virtigoからアルバム(6360 026)を出している、STILL LIFEというバンドを見ていくと、この本の面白さが分かると思う。


初版時は、バンドのメンバーの名前の記述もなく、”オルガンが導くオブスキュアーなプログレッシブ・バンドで、つまらない歌詞が邪魔”、”折りたたみジャケットで渦巻きラベルのため珍しく、高額で入手の作品だが、そんなお金を使うなら他のものがある”みたいに、辛辣に書かれていた。
また、アルバムの他に、シングルも1968年に出ているとされていた。

改訂版では、バンドのメンバー名が判明。
ただし、パートが分かるのはドラムだけで、他のメンバーは名前だけ。
初版のコメントはそのままで、メンバーの経歴が追記された。

大きな発見は、シングルを出していたのは、同じ名のバンドで、別であることが判明。
だから、STILL LIFE(1)がアルバムを出したバンド、STILL LIFE(2)がシングルを出したバンドと分けている。

今回の新版は、STILL LIFE(1)は西ミッドランドのコベントリーのバンドと地域を追加。
バンドのメンバー名とドラム、ハモンドオルガン、ヴォーカル、ベースとパートが全員分判明。
再発盤の情報もアップデイトされている。


なんとマニアックな調査をしているんだろう。
これだけちゃんと調べてくれるならば、この本に大枚はたいても問題無い。
このマニアックさを喜んで読みあさる私も相当なもんだと思うけどね。


今回の増補版、巻末にこの本作りに関わった6人の”ベスト20”が載っている。
このような本を作る人たちが選ぶようなベストだから、知らないような幻のアルバムがたくさん選ばれているんだろうなと思って読んでいくと、不思議なくらい真っ当なアルバムが選ばれている。
OPEN MINDやCOMUSのようなバンドではなく…

The Beatles
Caravan
Fairport Convention
Family
King Crimson
Pink Floyd
Them
The Who

…と言ったところなのだ。

もっとも、一人がIthacaの『A Game For All Who Know』とDarkの『Round The Edge』のような"超"幻のアルバムを入れていたりするんだけど、全部で120枚(重複しているから若干少ないかな)のうち、私がレコード盤を見たことがないのはこの2枚とJoe Harriottの『Hum Dono』とMagnetの『The Wicker Man』の計4枚くらいじゃないかな。


レコードを収集するだけならば、インターネットの情報で何とかなる今日この頃だが、こういった本を読みながら、より深みにはまっていくのも面白いのだ。

2014/12/3

   

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・ 

2015年

1月10日(土)大阪 FANDANGO
パレード vol.2
共:オシリペンペンズ、B玉、KK manga
OPEN18:00/START18:30 
¥2,300/¥2,800    
TICKET-12/6(土)発売「ローソン[57290]/e+/FANDANGO」
(各バンド予約及び店頭予約もあり)
INFO-FANDANGO 06-6308-1621

1月17日(土)名古屋 HUCK FINN
TASTE PRESENTS! Live Aktion 3 「名古屋殺炎上!!」
共:COPASS GRINDERS、discotortion
OPEN18:00/START18:30 
\2,000/¥2,500(DRINK別)    


2月11日(祝:水)名古屋 Club Quattro
お年玉GIG 2015
共:envy、THE NOVEMBERS
開場 17:30 /開演 18:30
前売り 3500円(別途ドリンク代 500円)