タイロウ連載コラムパンクでぶっとばせ

第212回
”ロックで踊りまくれ” の巻

１月にEarthlessの名古屋公演でDJをやってから、ハードロックづいている。

”DJをやらせろ！”と迫り強引にやらせてもらったのだが、実はここ何年あまりハードロックを聴いていなかった。
理由？そんなもん分からない。

ハードロックを聴くよりも、楽しい音楽があったからだ。

だけど、DJをやるにあたりハードロックを聴き漁ると、我が家の棚から素敵な音楽がたくさん飛び出して来た。
”これプログレじゃん”なんて思っていたバンドも、聴き直すとハードなのだ。

ハードロックは1967年の The Jimi Hendrix Experience でスタートした音楽だと勝手に決めつけ、サイケやフリークビートは意図的に外して音源を選んでみた。

いやあ、面白いほど出てくる。

アメリカのサイケとハードロックの境界線場にあるのを入れ出すとキリがない。
だから、イギリスものを中心に選ぶことにした。

ブルースロックからハードロック。
この辺りが分かると面白い。

本で読むよりも音をかけて聴いてもらえば、その微妙なニュアンスは一発で分かってもらえるのだ。
ロックが ”解放” を目指していた時代でも、アメリカのロックは突き抜けた解放っていう感じがするのに、イギリスのロックは同じ解放でもその空間の狭さ、息苦しさからの解放という感じがする。
アメリカのロックバンドには無い、いかにもイギリスのレンガ作りの路地裏から出て来た独特の匂いがある。

この日は、お客さんの反応も良かった。

Juicy Lucyの「Midnight Sun」をかけたら、いきなり”ナイス！” と反応するイギリス人。
Devourレコードの纐纈君は早押しクイズのように、Budgie の「Baby Please Don't Go」の音を出した瞬間に声をかけてくれた。
Ten Years After の「Hear Me Calling」や Climax Blues Band の「Reap What I've Sowed」で盛り上がる人も。
出演者である Earthless のメンバーは、セットチェンジの時に、例外でかけた日本の Flower Travelin' Band で大喜び。

「Satori」のフレーズを、かかっている音に合わせて弾いて、その勢いのままライブに突入していった。

彼等の演奏は本当に凄まじいものだった。

ステージ袖に陣取って、バンドの ”なま音” を聴いていたのだが、アンプからダイレクトに出てくる音を受け止めていると、”しびれる” っていう70年代的な言葉が思わず飛び出してきそうだった。
Earthless がアンコールで Groundhogs のカバーをやって終ったので、終演後 Groundhogs の「3744 James Road」をかけて、Pink Fairies の「Do It」に続けたら、Earthless のベースのマイクがDJブースに慌ててやって来る始末。

最後に The Sensational Alex Harvey Band の「God Night Irene」をかけたら、アメリカ人が ”良い選曲だね” と誉めてくれた。

Status Quo や Hawkwind のイギリス盤のシングルは、レンジが広くけたたましい音なので、本当はレコード盤で７０年代にイギリスの人たちが聴いていた音を楽しんでもらえると良かったのだが、DJ初心者なのでCDで対応したことが心残りだ。

後で、Earthless のメンバーを交えて雑談をしていた時に、Eternal Elysium のタナが ”今日、彼はブリテッシュロックだけでDJしたのよ” って言ったら、Earthless のメンバー全員が ”いや、Hairy Chapter があった” と一斉に声を上げる。

そうです、この日少しだけイギリスのバンドじゃないものをかけたのでした。

その曲を逃さず聴いてくれる、ロック中毒患者のようなバンドがいるだなんて、嬉しいじゃないか。
それは、いろんな音楽を聴いてその栄養を音楽で表現してくことの楽しさを体現している奴等だからこそ。

こんな感じで触発されて、ハードロックを聴き直している。
きっかけって、こんなもんで良いんだろうな。

こちとらパンクの前はハードロックの現役世代だから身体に染み付いている。

自分が大好きな、ハードロックを自分よりも若い世代に聴いて貰いたいだけ。

出来れば、会話が出来る程度の音量で、心地よくかけて身体を揺らすことが出来れば最高。
結構簡単そうに思えるけど、バランス感覚が必要だよね。
できれば、踊ることが出来るように音楽を上手にかけてみたいな。

ロックってダンスミュージックなんだもん。

2015/3/3