第218回
KNEW NOISEの巻


東京や大阪でライブをやると”名古屋のバンド、良いのいますか?”ってよく訊かれる。
その時は、”よく分からない”って答えている。
だけど、本当の気持ちとして、”いっぱい居るから、一気に答えても覚えられないでしょ”っていうところだ。


このエッセイを読んでくれている人なら、私の好きな音楽がどのようなものかは、だいたい察しがつくと思う。
ある時は60年代のマイナーなサイケであり、ある時はポップな新人バンドであったりする。

ある日、The Indexの「Eight Miles High」のよれたサイケな感じは最高だねって話していても、
翌日はKvelertakやThe Dillinger Escape Planが持つ攻撃的な音の魅力の話していたりする。
またある日は、Drutti ColumnとReal Estateを同列で話していたりする。

こんな調子だから、”本当は何が好きなんですか”なんてよく言われるが、全部好きなのだからしょうがない。


そんな私にとって、最も好きなロックは、言うまでもなくパンクだ。
このエッセイのタイトルだって、”パンクでぶっとばせ” なのだ。
でも、パンクって言っても、いろいろな表現方法があるから、こちらが、”パンクだな” って受け止めた瞬間から、なんでもパンクになってしまう。


話が逸れちゃったけど、今回は名古屋のバンドのことを書こう。
もちろん、私の基準で”パンク”バンドばかりだ。


もうずいぶん前にリリースされたアルバム『RIPPLE』からスタートだ。
ここのところ、よく名前を出している、”File Under”っていう名古屋のレコード店がやっているレーベル”Knew Noise Recordings”が 2012年にリリースした、オムニバス・アルバムだ。

大まかなジャンルとして、Post-Punkのバンドが集結している。

No Wave系かつGang Of Fourを思わせる硬質な一曲目の”POP-OFFICE”のベースとギターの音でまずノックアウトされる。
続いて、2000年代ブルックリンのバンドと同じベクトルの音が立て続けに繰り出される。

これ、本当に日本のバンドなの?って、耳を疑うような活きの良さ!

個人的なお気に入りは”世界的なバンド”の「NEW」っていう曲。
Radio4とThe Ruptureを想起させるこの曲で踊りたいと、思わずにいられない。

90年代に”暴走ねずみ”だった”ZYMOTICS”の「I Am The Whole Chinese People」も、WireとSoft Boysが合体したかのような”ひねた感じ”が素敵な出来栄えだ。

新作のリリースが待ち遠しい”6EYES”も含む、12バンド、12曲入り、43分のこのアルバム、もう在庫が少なくなっていると思うので、今のうちに手に入れるべきかと思う。
ちなみに、このアルバムのタイトル『RIPPLE』は名古屋の鶴舞にあるライブも出来るBarの名前だ。


次は、2000年代初頭に活躍していた4人組”THE T.V. DINNERS”が復活していた。
彼らは、NavelとSplit Singleをリリースしていたので、記憶にある人も多いと思う。

実は、2015年2月にMINERALのライブを観に行ったら、一緒に出ていて、復活を知った次第。
私は彼らのカセットテープを持っていて、”EMOなバンドが名古屋にいるんだ”っていう認識があったが、何しろ、活動期間があまりにも短かった。

かつて見たライブの印象は、”優しくて真面目なバンド”というところだ。
今年再び目にした時も、同じ印象だから、真摯なスタイルは変わっていないと思う。

これまた、よく名前を出す名古屋の”Stiff Slack”から、ディスコグラフィー的なCDとDVDが一緒になった作品『ZANKYO+Fuckin’ Eternal Romanticists』が出ているから、入手可能なうちに手に取ってほしい。
今聴き直すと、静と動の切り替えが、Texas Is The Reasonのようだなあと、ふと思えてしまった。
何れにしても、日本語で歌われる曲は魅力的だ。
また、新しい作品(シングル盤)が、同じくStiff Slackから出ているので、そちらも楽しんで欲しい。


続いて、GHILOM。
”マーマーフーフー”というバンド名で2008年結成し、メンバーチェンジで現在の4人になり、2012年から”GHILOM”と名乗っている。
ここ5年の間で、屈指の一枚が、彼らのアルバム『ギロムとは何か』だ。
収められた音は、所謂POST PUNKに属する、ヒリヒリとした肌触りがあり、This HeatやTGが好きな人にもアピールする出来栄えだ。
サチコ(Vo)の醒めた感じのする声とミズタニ(G)のノイズ感覚に溢れた音の響きは、ユーゴ(Dr)の原始的な躍動感を伴ったリズムとヨウスケ(B)の抑制の効いた低音と見事に融合している。

彼らのどこが素晴らしいかといえば、すべてを飲み込んで、最小限の表現方法で提示してくるところにあると思う。
一つ一つの音に深みがある。
これだけしか出来ないのではなく、いろいろなやり方の中で、今回はこの表現方法を採用しているという感じが、音からにじみ出ている。


最後は、Killerpass。
ここ1年半くらい、”おすすめだから、是非ライブを見て!”と言われ続けていた3人組のバンド。
遂にライブを見たら、本当に気に入ってしまった。

ドコドコしたドラム、ペケペケなベース、ジャリジャリなギター、ヘナヘナなボーカル。
もう最高。
”パンクってこうじゃなければ”と思わずにいられない瞬間を次々と繰り広げるライブは、一度見たら虜になる。

この感じは、エンターテイメントに成ってしまったパンクとは別の、現在世界中で起こっている”新しいパンクの波”と同じベクトルだ。

Killerpassのアルバム『まわりたくなんかない』をリリースしたのが、元Going Steady〜銀杏BOYZの安孫子くんがやっているKiliKiliVilla。
この取り合わせが妙に納得できる。
ライブを見るとよく分かるのだが、ファーストアルバムを出した頃のGoing Steady同様、見えない壁に向かって衝動的にぶつかっていくようなハチャメチャ感が痛快だ。
Cloud Nothing風のギターサウンドをしっかり取り入れていたり、実は細かく工夫されていたりするから、古いパンクの焼き直しになっていないところも魅力的だ。


こんな感じで、良いバンドがいっぱいいるのが、今の名古屋だ。

他にも、Shellacばりにバキバキに硬質なサウンドを叩き出す”Vacant”とか、活動が不定期になっているが”MILK”もいる。
既に10年を超える活動期間の”THE ACT WE ACT”も相変わらず新鮮なままだ。


最後の最後、忘れてならないのは、”COUNT PHANTOM”。
今までの名古屋のイメージを大幅に変える事になるであろうと思わせるほど衝撃的なバンドだ。
ノイジーでサイケデリックでカオティックでガレージなパンク感覚に溢れている。
それは、The Contortionsが全力疾走でLa Dusseldorfが持つアッパーな感覚を融合して、それを粉々に砕いて細分化したものを再構築したかのような感じ。
ギター・ベース・ドラムの3人から出てくる、乾いたサイケデリックな音は、スピードフリークそのもの。




あまりに独自の文化圏を持ってしまっていて、自己完結している名古屋のシーンは、他の町に住んでいる人に情報発信をしないので、非常に分かりづらいものがある。
まあ、”DIY”精神が根付いていると、前向きに理解してもらえると嬉しいな。


それにしても”KNEW NOISE”とは、いいネーミングだなあ。

2015/10/27

   

原爆の情報。
”原爆奇形階段”楽しかったね。渡辺さんのMCは最高だね。
達也もちゃんと”やらかして”くれたし!
で、年内のライブは、

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・

11月8日(日)名古屋 池下 Club Upset
CLUB UPSET 10th ANNIVERSARY ROCK the ROCK!!”』
共:D.O.T( with MOMORIN from GAUZE)
開場17:30 開演18:00 
前売り2,000円、当日2,500円(D別) 

チケット発売場所・・チケットぴあ /ローソンチケット /イープラス /UPSET予約 /各バンド予約
チケット発売日・・・9月5日(土)

12月5日(土)大阪 バッソ

12月6日(日)名古屋  Huck Finn


来年も企画が目白押しです。