第220回
最近好きなバンドの巻 その2


さまざまな音楽を聴くことは良いことだと思うけど、”あれもこれもなんでも聞きたい”なんていう感じではなくなってしまった。
十代でパンクになった時に決めたことは、”必要と思わないものに手を出さない”っていうことだった。

「選択と集中」の必要性を感じたわけだ。

当時、多くのロックファンがパンクと出会って最初に行ったのが、過去のロックを切り離すことだったと思う。
レコード棚から、プログレとブルース・ロックのアルバムを消し去ること。

そして、より原初的で衝動に満ちた音楽に触れることだった。

オリジナルの追求といったら格好良いけど、当時は”大物のアルバムは買わない”とか”売れているものは買わない”といった程度だった。
簡単な話、The Clashの”No Elvis. Beatles and The Rolling Stones”に感化されたわけだ。

で、最も聞かなくなった音楽がDeep PurpleやLed Zeppelinに代表されるハードロックだった。

何しろ、延々と続くギターソロがダメになってしまった。
”一曲3分以内の短い曲でポゴできる”が判断基準になった。
でも、この判断基準も1978年の秋に、PiLのファーストアルバムを聴いて、突然変更せざるを得なかった。

「選択と集中」は、パンク的なものと非パンク的なものという判断基準を新たに作り出し、継続していた。

その線引きも、1980年代に入り曖昧になっていった。メタル以外ならば許容範囲という感じだった。
終いには”クロスオーバー”でパンク的なメタルなら許せる範囲に変わってしまった。

いろいろ変化があったものの、「選択と集中」によって培われた判断能力は未だに音楽に接する際のベースになっている。




さて、今回の本題”最近好きなバンド”の続きだ。
今回も海外のバンド紹介だ。


まず、LAの女性二人組Girlpool。

楽器はギターとベースだけ。
渡英した2015年6月にライブを見たのだけど、どこをどう切ってもロックの匂いがする。
インターネットを駆使して情報を集めると、二人の名前は背の高い方がCleo Tucker (guitar, vocals) 。
ぽっちゃりとしてキュートな感じの背の低い方は Harmony Tividad (bass, vocals)。
2014年11月の情報で各々18歳と19歳と書かれている。
LAのDIYスペース”The Smell”で出会い意気投合し、カート・ヴォネガットのSF小説『猫のゆりかご』の”The Girl Pool”からバンド名を拝借したらしい。
当初からドラムレスで、2013年12月に初ライブを行い、2014年2月に7曲入りのEPをリリース(この作品はWichitaが同年11月に再発している)。Swearin’のドラムKyle Gilbrideがエンジニアとミックスを担当した、10曲入りのファースト・アルバム『Befpre The World Was Big』を2015年6月にリリース。
これだけ情報があれば、あとは判断がつく。

彼女たちの最大の魅力は、二人でハモるヴォーカル。
若さに溢れ、溌剌としたその声は、何者にも代えがたい。
Babes In ToylandやTeam Dreschを初めて聴いた時に感じた、心の中にスーッと入って来る感覚だ。
素直な声はBellyのTanya Donellyや『Take Offs And Landings』の頃のRilo KileyのJenny Lewisあたりも連想させる。

アルバムのエンジニアがSwearin’のKyle Gilbrideというのも興味深い。
なんでも、彼女たちはフィラデルフィアに移り住んでいる模様だから。

ここでキーパーソンKyle Gilbrideの説明を。
2013年Waxahatcheeの『Cerulean Salt』のプロデューサーとして、その名前を知られた人物。
WaxahacheeはKatie Crutchfieldのプロジェキト。
Swearin’のAllison CrutchfieldとKatieは双子の姉妹だ。
2013年リリースのSwearin’のセカンド・アルバム『Surfing Strange』を聞き直すと簡素な音作りがしてあり、Girlpoolの二人がKyleと一緒にやりたかったのかが見えてくるような気がする。
しかし何と言っても、Girlpoolは”パンク”を感じさせるからこそ、私の琴線に触れたのだろう。
アルバムを聴くと、シンプルこの上ない曲は、雰囲気としてWireの『Pink Flag』のような張り詰めた緊張感もあるから不思議だ。
”何ができるではなく、何をやりたいか”、その姿勢が彼女たりが作り出す作品から感じ取れるから、魅力的なんだろう。


次は、LEEDSの5人組、AUTOBAHN。

ファースト・アルバム『Dissemble』を2015年8月にTough Loveからリリースした彼らは、ギター二人にベース、ドラムとヴォーカルというあまりにもロックな編成で、その音は1980年代のバンドかと思うほど、Goth、ネオサイケ、ポジパンしています。
なんたって、LEEDS出身なので、体の中にGothの血が流れているのではないでしょうか。

聴いた瞬間に思い出したバンド名を連らねると

Bauhaus
The Cure
Sisters Of Mercy
The Mission
Killing Joke
The Comsat Angels
Play Dead
Wasted Youth
Ski Patrol
Modern English
Positive Noise
Danse Society
Dance Chapter 等々

これでもかと思うぐらい、徹底的に”あの”音です。

これらのバンドにFields Of The Nephilimのマカロニウエスタンなテイストを付け加えると、ほぼこのバンドの作り出す音がイメージできると思います。

これほどまでに、日本人好みの音なのに、なぜか全く話題にならないのは、おそらく”鎖国状態”のためじゃないかと、勘ぐってしまいます。
今のバンドで近い雰囲気は、The HorrorsとToyっていうところでしょう。
同郷のHookwormsやEagullsあたりの醒めたサイケデリックな感覚も持ち合わせています。
ついつい、両手を上げてモンキーダンスをしないといけないのではないかと錯覚してしまうのは、私だけだろうか。


もう一つ、アメリカのバンドを。それもデトロイト!
Protomartyr(プロトマイティア)っていうバンドです。

2015年の『The Agent Intellect』は3枚目のアルバムなので、中堅どころといったところでしょうか、日本では全く話題にならないため、新人のような気がしてしまいます。

2008年に結成した彼らは4人組。

Greg Ahee(Gt)とAlex Leonard(Dr)がデュオで始めたバンドButt Babiesに、いかにもアメリカの中年のおじさんといった感じのする風貌のJoe Casey がヴォーカルで参加。
Scott Davidson(B)が加わった段階でバンド名をProtomartyrに変更。
2012年にファーストアルバム『No Passion All Technique』をデトロイトのUrinal Cake(日本語だとトイレ・ボール)というとんでもない名前のレーベルからリリース。
続いて2014年にSub Pop傘下のHardly Artからセカンドアルバム『Under Color Of Official Right』をリリース。
私はこのアルバムで、このバンドを知った。

初めて「Come & See」を聴いた時は、てっきり1970年代のPost Punkバンドの曲かと思ったほどだ。
それもイギリスの。

ギターの音の残響感は、A Flock Of Seagullsを思い出させた。
サード・アルバム『The Agent Intellect』を聴くと、The Strokes的なリフの曲もあり、アルバム一枚を聴き終えると、”一体何を聴いていたんだ?”と一瞬戸惑うような体験を何度もしている。

Protomartyrの魅力は、Post Punkとガレージロックの融合にあると思う。

ある意味とてもThe Stooges的な衝動的な暴力性を持ちながら、他方でJoy Divisionのような内証的な個性を持ち合わせている。
また、ライブの映像を見ると、”Tindersticksか?”って思わせるような静寂性があるから不思議だ。


このようなバンドが、「選択と集中」によって、私に耳に入っていきたバンド達だ。
こんな感じで、海外に魅力的なバンドが多くいるのに、あまり日本で話題になっていないから、ネットで調べて聴いてみてください。

2016/1/8

 

 

 

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・

原爆のライブ予定は凄いことになっています。
今年の”お年玉GIG”はついに、「ハードロック・マチネ」が復活です。
新幹線に乗れる時間に終演するので、東京や大阪の皆さんも暴れに来てください。


1月11日(祝・月)京都 磔磔
MOST X 原爆オナニーズ
共:MOST
開場 17:30 開演 18:30
前売り3,000円、当日3,500円(D別)


1月23日(土)名古屋 Red Dragon 
Re-Crystallization〜HELLCHILD〜
共:HELLCHILD、九狼吽、THE SAD MILE
開場18:30 開演19:00
前売り2,000円(D別) 


2月7日(日)名古屋 クラブクアトロ
お年玉GIG 2016:HARD ROCK MATINEE VOL.3
共:BAREBONES
ETERNAL ELYSIUM
NEPENTHES
Crocodile Bambie
SLIP HEAD BUTT
開場15:30 開演16:00
前売り3,000円、当日3,500円(D別)


2月20日(土)東京 新大久保 Earthdom
EARTHDOM 10th anniversary "RedDyed SP01"
共:ASSFORT、BAREBONES、SLIP HEAD BUT
開場18:30 開演 19:00
前売り2500円 /当日 2800円(入場時にドリンク代金500円が別途かかります)
【前売り発売】 ※ チケット発売日: 12月20日
EARTHDOM、NAT records、イープラス