第223回
待つこと35年 の巻


Bad BrainsのHRがラスタになる前、安全ピンにチェーンをつけてジャケットの襟を立てていた1979年。
結成間もないBad Brainsのメンバーの頭の中にあった”パンク”のイメージはどんなものだったんだろう。

アルバム『Black Dots』を聴くと、始めたばかりのバンドのやりたいことがいっぱい見えてくる。

一番びっくりするのは、Sex Pistolsの「God Save The Queen」のフレーズそのままの「Redbone In The City」かな。
ジョニー・ロットンそっくりな歌い方は、後で聴くことができないこの時期ならではのものだ。

最後に入っている「Send You No Flowers」の歌い方も、最初はジョニー・ロットンしているな。

その歌い方を早口にスピードアップして変化させていくと、いきないり”あの”特徴的なBad BrainsのHRスタイルのヴォーカルになる。
Bad Brainsは突然変異のハードコア・パンクのイメージがあるけど、こうやて聴いていくとバンドの背景が見えてきて面白い。


で、Bad Brainsの元ネタのバンドがまだあるんですね。

いや、Bad Brainsだけじゃなく、DCハードコア、いやアメリカで”新世代パンク”って言われたハードコア・パンクの連中がお手本にしていたんじゃないかと思われるバンドが。

そのバンドは、The Ruts。

The Rutsって言っても、日本じゃあ全く人気が無いから”ヘェ〜”で終わっちゃいそう。

1970年代に、リアルタイムでパンクだった人でも、あんまり気に留め無いだろうな。

「Babylon’s Burning」一曲で、The Clashフォロワーのバンド、そんなイメージしか無い人も多いんだろうな。
だけど、その人たちは、アルバムを聴いているだけで、シングルまで聴いていない人だろう。

何しろ、The RutsはシングルのB面に、言葉を失うくらい格好良い曲が入っているから。

例えば、「Jah War」のB面「I Ain’t Sofisticated」なんて、1年後に数多く出てくるアメリカのハードコア・パンクの原型と言っていいだろう。
そのスピード感は、The Lurkersの「Shadow」やThe Damnedの「Love Song」と同じ。

いや、もっと速い。

速いだけじゃなく、「Give Youth A Chance」のようなレゲエ〜Dubを自然消化した曲もある。

1983年にBad Brainsのファーストアルバムを聴いた時に、”あっ、The Rutsじゃん”って思ったもんだ。
「Sailin’ On」や「Big Take Over」のギターなんか、少しロック色がありドライブ感溢れるところは、もろにThe Rutsみたいだもんね。


The Rutsが、日本で全く評価されていない理由ははっきりしている。

アルバムが日本で出た直後に、ヴォーカルのMalcolm Owenがヘロイン・オーバードーズで死亡して、バンドが解散してしまったからだ。

それと、PiLをはじめとする”Post Punk”(日本では”オルタナティブ”って言っていた)大流行の時期に、もはや”古臭いパンク”だったことも、重なっていると思う。


まあ、見方を変えて、ハードコア・パンクの原点という視点だと、全く異なるんだけどね。

パンクを研究している人が居るとしたら、1979年のイギリスのパンクはとても面白い状況で、同じバンドの立ち位置を多角的に診ることができるから、ライブの日程や音源から考察してもらえると面白いはずだ。

この微妙なニュアンスは、ロンドンパンクの流れを後追いで知っている人にとっては、どうしても理解しがたい雰囲気があるんだけどね。

そこで、今回のタイトルに繋がるんです。



ついに出ました!本当に出てきました。
今まで、チョロチョロと小出しされていたものが。
何が?って思うよね。この興奮具合。

それはね、The Rutsの『LIVE AT THE MARQUEE JULY 1979』が正式に完全版で出てきたのです。
今まで「Human Punk」一曲だけ、1stアルバム『The Crack』の最後に入っていて、その凄まじい観客とのやりとりや、演奏を聴いていたので、ライブ全部を頭から聴きたくて仕様がなかったのです。(1987年にLinkから『Live And Loud!!』っていうタイトルで、海賊版の音で、半分くらい出てはいたんだけどね。)


聴いた感想は?

そんなもん”最高”に決まっているじゃない。

もしPUNKが好きだったら、これは間違いなく、絶対に聴くべき音源の一つだ。
35年間待っていた甲斐がありました。

比較するならば、Sham69の『Tell Us The Truth』のライブ・サイドの熱気が、そのまま同じように録音されている。

Sham Army同様、 Ruts Armyが騒ぎまくっている。

アルバムをリリースする前なのに、バンドとお客が丁々発止とやり合う緊張感あふれる熱気がビンビン伝わってくる。
ハードコア・パンク黎明期の音としても興味深いものがある。

それは、 UK Subsのライブ『Crash Course』の付録12インチのEP『For Export Only』(1979年7月15日にロンドンのライシアムで録音)同様、驚異的な破壊力も備わっている。

Dischargeが或る日突然登場したわけではなく、The RutsやUK Subsの存在なくして、ハードコア・パンクは現れなかったと思う。



この完全版、収録場所はタイトルにある通り、ロンドンのWardour St.90にあった伝説的なライブベニュー”Marquee”。

収録日は1979年7月19日だ。

ライブ開始から4曲、「Something That I Said」・「H-Eyes」・「Gotta Little Number」・「I Ain’t Sofisticated」の流れは、ポゴダンスよりもスラムダンスをするのにふさわしい、畳み掛けるような荒々しさ。

続く「S.U.S」はスローダウンしてレゲエ調になる。
この辺りはまるでBad Brainsのライブを聴いているかのような錯覚に陥るのだけど、こっちが元ネタだよね。

再びテンポアップして「Criminal Mind」、Paul Foxの金属的なギターの音が突き刺してくる「Dope For Guns」、”もうちょっと下がって”と場内アナウンスの後「Babylon’s Burning」。Malcolm Owenが”あーっ!”って叫んで曲が終わる。

はっきり言って、この日ここにいたら、ここまでで、汗みどろだろうな。

やっとポゴできるスピードの「Back Biter」から、レゲエの「Jah War」につなげるあたりは、The Clashみたいだけど、The Rutsの方がMisty In Rootsのレーベルからシングルを出しているだけあって、より重たくて、硬質なブリテッシュ・レゲエの趣がある。

John ’Segs’ Jenningsのベースラインが印象的な「You’re Just A…」から「It Was Cold」、「Out Of Order」ときて、最後の曲「In A Rut」ではDave Ruffyの力強いドラムの音につられて、客がステージ上に乱入したのか、Malcolm Owenがヴォーカルの代わりに客の声がオフ気味に入っていたりする。

”Good Night”の声。

ここから、アンコールだ。

Ruts Armyが黙っちゃいない。

アルバム『The Crack』で聴くことができた唯一曲「Human Punk」。
ライブの雰囲気はこの流れだったのか。
これで35年間の謎がついに解けたぜ。

”じゃあ、またね”って言ってステージを下がるけど、許すわけないじゃん。

”Savage Circle”って、客が騒ぎ出すけど、ここは、ウルトラ・ハイスピードの「Society」だ。
Army達は、完全にもみくちゃで暴れまくっているんだろうな。

またもや、”またね”って言ってステージを降りてしまう。

ここからのArmyの騒ぎ方はSham69のフリー・シングル「Song Of The Streets」(What Have We Gotが入っているやつね)と同じで、まずは”Ruts”コール。

相変わらず”Savage Circle”って叫んでいるけど、ステージに上がってきたMalcolm Owenが”他のにしない”って逆リクエスト。

「Babylon’s Burning」の声に応えて、Armyのカウントと共に曲がスタート。

強烈なコーラスを繰り広げるArmy達。
いやあ、最高だ。

ストリート・パンクの原点を垣間見るかのよう。



以上が、長年聴いてみたかった『LIVE AT THE MARQUEE JULY 1979』の全容だ。

ジャケットのクレジット16曲目が「Savage Circle」になっているけど「Society」の間違い。
まあ、そんなことどうでもいいや。



このアルバム、実は簡単に手に入るんだけど、ちょっとしたトリックがある。

昨年出た、『The Virgin Years』というタイトルの4枚組Box Setの一枚なのだ。

ぶっちゃけ、このBox Setは入手可能なうちに手に入れることを強烈に勧めます。
なんでかって言えば、長年廃盤状態の『The Peel Session Album』と『BBC Radio One In Concert』が『At The BBC』のタイトルで一枚になって入っている。

そのうえ、1979年2月の「Kid Jensen Session」の3曲が今回初めて正式リリース。

このBoxに入っている、『The Crack』と『Grin & Bear It』が正式なThe Rutsのアルバムだけど、
パンク・マニア的な見解をすると、Virginのものよりも『The Peel Session Album』のほうが断然良い出来なので、オススメ。

もちろん、6枚のシングルもAB両面全曲入っている。

ブックレットも、(英語なので辞書を片手に読んでいくと)バンドの詳しいバイオグラフィーが書かれている。

今まで、各々のアルバムを持っている人も、この際、コレクションに加えても何の問題もないと思いますよ。

なんたって、The Rutsはオリジナルパンクからハードコアパンクに繋がる最も重要なバンドの一つなのだから。


同じシリーズで、PenetrationとMotorsも出ているけど、まずはこのThe Rutsの素晴らしいBoxを!


やっぱ、”パンクでぶっとばせ” だよ。

2016/3/24

 

 

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・

4月9日(土)大阪 パンゲア
agartha20160409
共:Burl、The China Wife Motor、ほか
開場18:00 開演 18:30
前売り2500円 /当日 3000円(別途ドリンク代) 


4月17日(日)名古屋 今池ハックフィン
玉 Rock 2016
共:South Bound、Killerpass
愛知琉球エイサー太鼓連
ビビビ
ファンカデリックセンター今池
松原大
開場15:00 開演 15:30
前売り3000円 /当日 3500円(1ドリンク+お土産付き) 
 


5月14日(土)東京 高円寺Show Boat
感乱射
共:MOSQUITO SPIRAL
ANGER FLARES
-DJ-ISHIKAWA(DISK UNION/a.k.a.TIGER HOLE)
開場 18:30 /開演19:00
前売り 3,000円 当日3,500円(別途ドリンク代) 
*TICKET sale ... 3/12〜LAWSON TICKET,e+,ShowBoat
■問合せ:ShowBoat 03-3337-5745/info@showboat.co.jp