第229回
SALAD DAYSと日本のパンクの巻


アメリカ、それもワシントンDCのパンク映画『SALAD DAYS』を見た。

いろいろ考えるところが多い映画だった。
アメリカの首都といっても、”政治の街”だから、パンクなんて全く縁のない場所だ。

なんで、そのような場所で、パンクが流行ったんだろう。

LAやニューヨークのようにホワイト・トラッシュ(白人の貧困層)がパンクになったわけでもなさそうだ。
比較的裕福な層の子女がパンクになっているところが、この地域の特徴だ。

これは、”一億総中流”だった70〜80年代の日本の状況に似ている。



どこのパンクもそうだと思うけど、始まりってほんの一握りのガキたちが始めている。

おそらく、マックスで見ても20人程度じゃないかな。
だいたい高校生かちょうど高校を卒業する17〜19位の年齢だ。
レコード店にたむろする、オタク系の連中だろうな。
メインストリームのBostonやKansasを聞かずに、パンクを聴いているんだから。

当時の日本だったら、サザンやユーミンを聞かずにアナーキーやスターリンを聞いているみたいな感じかな。

おそらく、この映画を見ると、地方に住んでいる人ほど、状況に共感するんじゃないかな。

”俺の高校生の時みたい”とかね。

”俺のクラスなんて、一気にパンクになったよ”っていう人もいるかもしれない。

名古屋だと、後にStar Clubに加入する、狂児やNo Fun Pigの話を聞いていると、まさにDCのシーンと重なるからね。

おそらく、そんな連中が作り出した、パンク・ムーブメントがDC Hard Core Punkだ。

イギリスのHard Core Punk(UK 82)よりも、ファッションが素っ気ないところが、いかにもアメリカらしい。
イギリスの重たい音と違い、カラッとしていて素っ気ない程短いところがアメリカのバンドの特徴だ。
この音は、当時の日本ではあまり受け入れられなかったな。
やっぱり、DischargeやGBHやChaos UKをみんなが聞いて衝撃を受けていたから。
ストリート系だと、The ExploitedにAnti Nowhere Leagueや4 Skinsだよね。

全部イギリスのバンド達だ。

この時代に、Minor ThreatやGovernment Issueを聞いている奴なんて、周りにほとんどいなかったもん。
それに、日本に良いバンドが多くいたから、ライブを見て暴れていたから、海外の状況なんてどうでもよかったというのもある。


しかし、この映画を見るとあまりにも多くの共通項があって、驚いてしまう。

DIYなレーベル運営なんて、自分自身もTin Drumを作ってやっていたし、ジャケットの作り方も全てハンドメイドだったし、そして何よりも安価で行き渡るように、精一杯の工夫をしたもんだ。

ライブの自主運営も、地元ではお客が暴れるということもあり、ライブハウスを締め出しくらって、名古屋今池の芸音劇場で、日本各地からバンドを誘って開催していた。

おそらく、日本中どこでも状況は似通っていたはずなので、喫茶店を貸し切りにしたライブだとか、地元の有志で会場を借りて企画は当たり前だったと思う。

なんたって、今と違って、”ライブハウス”は、東京や大阪、京都をはじめとする大都市にしかないようなイメージだったから。

そして、大きな共通項、”自主制作”っていう感覚。

英語の”D.I.Y”よりも、ぴったしな言葉だと思う。
”自分で始めなければ、何にも変わらない”を、理屈ではなく肌で感じていた。


この映画を見ていると、80年代半ばにDCは大きな変化があるのだが、日本も同じように大きな変化をしている。

インディーズ・ブームだ。

それまでは、パンクを受け継いだハードパンクやハードコアパンクが主流だったが、サイケデリックなもの、よりノイジーなもの、と多様化していく。

この辺りは、このホームページを読んでくれている人は、ほとんど体験していると思う。

なんたって、”フジヤマ”こそ、その震源地だったんだから。

レコード店で、レーベルで、ライブの企画者、ファンジンの制作、全部フジヤマはやっている。
いまの、日本の音楽シーンの礎は、確実にフジヤマというか渡辺さんが作り上げたと言いきっていいだろう。


「SALAD DAYS」は、ワシントンDCの話だけど、日本に住んでいる人ならば、各々の地元の話で、同じような映画を作ることができるのではないかと思ってしまえるほど、近親感を覚えることができる作品だ。

この映画を見て、フジヤマで話をすると楽しいだろうな。

ほとんど日本に置き換えることができるんだから。

夕方に、ふらっと三軒茶屋に寄りたくなっちゃう映画だよ。

2016/10/3


 

 

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・

10月9日(日)広島 Live Space 4.14(広島市中区) 
DISK SHOP MISERY&DUMB RECORDS Presents!!
The GENBAKU ONANIES in HIROSHIMA!!

共:ミミレミミ(Fukuoka)、ORIGIN OF M、JAILBIRD Y
SO-CHO PISTONS
DJ'S/Yanshinista!,鉄太,Yui
Open 17:30 Start 18:00
ADV 2,500yen Day 3,000yen(+1drink)
学割 1,000yen(+1drink)

10月29日(土)神戸 ハーバー・スタジオ
  LET’S BEGIN! SPECIAL
共:Hawaiian 6、The Cherry Cokes、

開場 17:30 /開演18:00
前売り 2,800円 当日3,300円(別途ドリンク代600円)
■問合せ:ハーバー・スタジオ 078-381-6128


11月6日(日)浜松 窓枠
 HAMAROCK’16
共:Laughin’ Nose
鉄アレイ
ZONE、Radiots
So What
壬生狼
Beyond Hate
The Prisoner
The Angle
Dildos
Anger Flares

開場 11:00 /開演12:00
前売り 3,500円(別途ドリンク代)
■問合せ:窓枠 053-451-3035

11月12日(土)名古屋 今池 ハック・フィン
HUCK FINN ANNIVERSARY 35th 番外編 
= [And love, love well tear us apart again, but...] 
共:SOCIAL PORKS
Sister Paul
SHIGE BEER AND A THOUSAND NEW WIFE
O/A ISAMU
DJ:Mr.F

開場 17:30 /開演18:00
前売り 2,500円 当日3,000円(別途ドリンク代) 

■問合せ:ハック・フィン