第251回
”FLEX！日本のパンクディスク・ガイド” の巻


ドイツのマニアックなパンクのディスク・ガイド本”FLEX！”が日本のパンクの特集を出した。

タイトルは
『FLEX! Discography Of Japanese Punk, Hardcore, Mod, No Wave 1975〜1986』
というもの。

もちろん飛びつきました。
読んだので、結論を。

”結構やるじゃん！”っていう気分です。

特に前回出した本が、アメリカのパンクを２冊に分けて、かなり細かい内容まで徹底的に調査してあり、重宝しているだけに、こちらとしてはハードルを上げすぎているところもあるので、どうしても厳しめの評価をしているかと思います。

アメリカものも、改訂版の都度精度が上がってるだけに、今回の日本ものも次があれば、もっと良くなると思うけどね。


今回の本は、DOLLの別冊「パンク天国４」で取り上げなかった、ハードコアパンクがメインになっているから、かなり嬉しい。

1986年までのパンク系のバンドについて、当時リリースしたレコード中心に組んでいるので、現在５０歳以上の人にとっては、懐かしさ満載っていところだろう。


ディスコグラフィー本だけに、マニアックにレコード番号は初回、再発といった具合で載っている。

まあ、再発のCDも詳しく載っているから、褒めたい気持ちはあるんだけど、そこはDISCOGSで分かる範囲とそんなに違いがない。

プラスポイントは、海賊盤の情報があるところ。

日本国内に住んでいると、オリジナルが何らかの形で手に入るため、必要性をあまり感じないのだが、海外の人は Killed By Death等で、初めて日本のパンクに接しているだろうから、オリジナルの入手は難しく、ヨーロッパのマニアが勝手に作ったモノをオリジナルだと思い込んでいる場合もあるため、その判別ができるようにしているところは、良心的だ。


過去のFLEX！もそうだけど、あくまで発行している人の好みを反映した本だけに、発行人の興味の対象から外れたバンドは、載っていない。

それゆえ、No Wave系はかなり少ない。

Aunt Sallyはあるけど、Vanityレーベルの多くのバンドが載っていない。

DadaやSympathy NervousやBGMは載ってしかるべきだろうに。
同時代のA-Musikも。

この辺りは、「パンク天国４」のほうが丁寧かな。


個人としては、自分のバンドがしっかり載っているので嬉しい限り。

特に、近年”発掘音源的”にリリースした『Back To Open House』や、1982年春のthe原爆オナニーズのライブを入れた『THIS WAS/THIS IS」もしっかりフォローしてくれている。

この辺りは、流石だ！

情報にプラスしたいのは、『Just Another The原爆オナニーズ』は初回の６６６枚にはポスターがついていること。
『Not Another The原爆オナニーズ』は、プラスチック製のバッジが付いていたこと。

この辺りの特典は、後追いで購入している人には、情報が抜けてしまうことが多い。


Tin Drumレコードのオムニバス・アルバム『Underground Romance』は、バンドの紹介に留まらず、
渡辺さんが作ってくれたジャケットの細かいデティールも記している。

他には「Slaughter」のEPも取り上げてくれているので、感謝しちゃう。
このEPは、メンバーの手売り分だけ、ジャケットの色が違うのでマニアには追加情報だ。


裏話を書いておくと、今年の年初に過去にFLEX!を直接購入したことがある日本の人に、メールで”欲しいレコード・リスト”が送られてきた。

まあ、私のところにもね。

結構まっとうな、日本のパンクのリストだったので、見て”ああ、こんなレコードが欲しいわけね”って思った。

そしたら、9月になって、いきなり出版の案内メールが来たから、その行動力は驚くばかりだ。

今回、実際に本を手に取って読んで行くと、思わず”好きこそ物の上手なれ”っていう言葉を思い出した。

じゃあね。

2018/11/18

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