第267回
JUST ANOTHER の巻


”一枚のレコードは何か?” と問われたら、即答できる。

『Just Another the 原爆オナニーズ』であると。


聴いてきたレコードの中で選べば、それこそ何十万曲の中から その日の気分でいくらでも選べる。

すぐにベスト5だとか10といった具合に、ものすごく少ない数を選ばせるので困ってしまう。
こちとら、重箱の隅をつつくような聴き方をしているから、王道の音楽を全く知らない。

だから、ジャンルをパンクに限ってベストを選んでも100曲あっても全く足らない。
そうでしょ、Mink DeVille や Harry Toledo とIDLES や Title Fight を一緒に聴いちゃうんだから。
Slipknot や RAMONES も Big Thief も The Exploited や Sex Pistols も同じ鍋に入っちゃう。

やっぱり1000曲くらいは欲しいな。

好きなアルバムは?と問われれば、自分が作成したアルバムの他にいくらでも選ぶことができる。
それこそ、1000枚位選ぶことができるなら、非常に楽な気持ちで選ぶことができる。

当然のことながら、”普通はそんなの選ばないでしょ!”って言われるようなアルバムも好きなのだ。

そのような私が、”一枚のレコード”と究極の質問をされた時の答えは、冒頭のようなものになる。


何しろ、自分が思い描いていたバンドの音で、自分のエゴを全部出し切った、自主制作のレコードだ。


レコーディング当日に”成人式”を迎えたマコトの、この世のものとは思えないほど気合の入ったドラミングは、前日までの練習では聴くことができなかったような気迫がある。

腹に蹴りを入れるかのようなバスドラムは、全曲に渡って独特の重さを貫いている。

タムタムとスネアも、マコト・チューニングならではの独特なマジックのようなヘヴィーさがある。
パンク・バンドに必要不可欠な、ほんの少し前に突っ込むようなキレた演奏はなにものにも代えがたい。

エディのベースとシゲキのギターも真空管式アンプのぶ厚い音ではなく、トランジスター・アンプならではのシャープさと繊細さがある。


バンドとして、”やりたいこと” と ”やれること” のギリギリの選択を、お互い感じ取り突き進んで取り組んだ作品だ。


レコーディング・エンジニアのヒコの存在も大きい。

オリジナル原爆オナニーズのメンバーで、同じ歳なのでこちらの意図しているところを理解するスピードが早い。
ほんの少しの音の違いのこだわりや、レコード冒頭の音量だけではなく微妙な曲間の調整をテープでそれこそミリ単位で何度も対応してもらった。
レコード盤面レーベルのレタリングもヒコがやってくれた。


ジャケットとポスターの制作は、スタークラブのマネージャーのミックがやってくれた。
スタークラブを辞めた連中が作ったバンドの最初の音源を、元のバンドのマネージャーが手助けしてくれるという不思議さ、これが名古屋だ。


最初の枚数666枚は、エディの自宅で夜にメンバー4人で一枚一枚ジャケットに通し番号でスタンプ押しをして、折りたたんでレコードを入れ、ポスターを折りたたみ挿入するといった具合で、よく海外のバンドのドキュメンタリー映像で見るのと同じような、完全な自主制作。


このように、何もかも初めての経験をして世に出したレコードだから、究極の一枚は…

『Just Another the 原爆オナニーズ』。



海外で初めてバンドでライブを行った、サンフランシスコのカメレオンの会場に駆けつけてくれた、Dead Kennedys のジェロ・ビアフラは挨拶もそこそこに ”僕がもっとも手に入れるのに苦労したレコードの一枚が君たちの『Just Another the 原爆オナニーズ』だよ。”
ってニコニコしながら興奮気味に話しかけてくれた。


そして今回、the原爆オナニーズ初のドキュメンタリー映画のタイトルも

 ”JUST ANOTHER” だ。

2020/8/9

 

the 原爆オナニーズのキャリア初の
キュメンタリー映画JUST ANOTHER
10月24日から新宿K’s cinemaほかで劇場公開される。

http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/90500/2

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・

ライブ情報は、変更があるのでバンドのホームページまで。