第271回
Nobody’s Perfect の巻


宇宙や地球の過ごしてきた時間の中では、ほんの一時にしかすぎないことは理解しているつもりだが、2020年は今までの人生で変化の大きな年になった。


音楽ソフトもCDというフォーマットからデジタル配信に変わったし、アナログのレコード盤が復活した。
とはいうものの、私はLPレコードからCDで再発される”ある作品”を待ち望んでいた。

よくパンクのレコードのCD化で話が出てくるのは、Gloria Mundiの「I individual」だけど、私の待ち望んでいたのは1980年にイギリスのアイランドレコードがリリースした一枚のアルバムだ。

そのアルバムは、the distractions の「nobody’s perfect」。



おそらく多くの人は全く知らないバンドだろうし、マニアならFactoryから出たシングル「Time Goes By So Slowly」で知っている程度だと思う。

パンクという範疇で話をするには、1978年に最初の12インチEP「You’re Not Going Out Dressed Like That」を出しているから出遅れ感はある。
時期的にはNew Waveということになる。

バンドのメーバー写真は、Buzzcockのようなシャツを着たメンバーもいれば、昔のビッグバンドのようなジャケットを着込んだメンバーもいる。
ちょうどパンクの波が過ぎ去った、ポスト・パンク突入期の微妙な雰囲気が出ていて興味深い。

このレコードは、ガチャガチャした音で期待していたほどの輝きを感じることが出来ず、数回聞いただけでレコード棚に保管状態になった。

出会った時はあまり良い印象を持っていなかったが、アルバムを聴いて好きなバンドになった。
レーベルとしては、U2と同じ時期に売り出しにかかっているから、期待はしていたのではないかと思う。


このアルバム、どこが良いのかといえば、”煮え切らないところ”だ。

なんかイマイチなところが、とても良い。
一生懸命なところも好意を持てる。

どのようなバンドに近いのか。
あえていえば、SqueezeやElvis Costello & the Attractionsだろうけど、彼らほどポップでもなければ、垢抜けていない。
そもそも、キーボード担当のメンバーがいないのに、やたらと安っぽいキーボードの音が被さっている。
これは、プロデュースを担当したPhil Chapmanの趣味なんだろう。


今回のCD化により、オリジナルのアルバムとは別に、オーバープロデュース前の状態にしたアルバムがCD2に入っている。

これが本当に良い出来栄えで、ある意味”普遍的なポップ・パンク”な作品だったことがよくわかる。
どの曲も、いままで聞いていた時に”うるさいなあ”と思っていたキーボードの音がなくなり、ギターを中心としたその音作りは、90年代のギターポップバンドのような、ふんわりとした感触に満ちており、怒りに満ちたパンクの時代に合致しなかったんじゃないかと思わずにいられない。
ギターソロやカッティングにBluetonesやStone Rosesを彷彿させるところもあり、時代が合えばもう少し話題になったのではないかと考えてしまう。


バンドって難しいなあ。


今年は、こんな感じで終わり。

2020/12/27


映画 「JUST ANOTHER」 の公開が決まっているところの情報です。



●公式ホームページ https://genbaku-film.com/

12/1(火)〜12/7(月)広島・横川シネマ
12/4(金)〜長野・アイシティシネマ
12/11(金)〜京都・出町座

上映決定|神奈川・横浜シネマ・ジャック&ベティ
以降全国順次公開