第282回
”2021年に聴いた音楽　その1” の巻

６０歳を過ぎてから、一年たつのがやたらと早い。
歳をとると暇になるから、時間を持て余すんじゃないかと思っていたけど、間違っていた。

2021年は、年明けから日本のバンドばかり聴いていた。

年始早々、『SWARRRM / ゆめをみたの』(3LA 3LA-039)が、コロナ禍の萎縮した気分を一掃してくれた。
前作『こわれはじめる』で極限に達したと思っていたのに、軽々と次のステップをみせてくれた。

音にピンと筋が通っていて、バンド全体であらわす音像は、とかくパート毎の表現に気持ちを奪われがちな聞き手に、グラインド・コアとかカオスとか、細かいことなど ”どうでもいいわ” と主張しているかのようだ。

この衝撃は、中学生の時にYESの 『危機』 を初めて聴いた時の、なんか訳のわからないとてつもないものに出会ってしまった驚きを、思い出させるほど充分なインパクト。

次は春にリリースされた、『S.H.I / 4 死 DEATH』(Relapse RR45071) だ。

世界中の現行のエクストリームな音楽を積極的に紹介しているアメリカのリラプス・レコードからのリリースだけに、”やった！” と激しく同意したくなった。

S.H.Iとは、毎年名古屋で Demolition と一緒に 「七夕の夜」 というライブを企画し続け、コロナ禍以前から2020年は計画的に休むことにしていたが、2021年もコロナが蔓延し開催の見込みが遠のき落胆していたら、セカンド・アルバムとなる新作を届けてくれた。

比較しやすいバンドは、ナイン・インチ・ネイルズやゴッドフレッシュになってしまうが、最近のスリップノットもかなり近い。
とはいうものの、強者が集まって提示してくる音だけに、表現の幅が桁違いだ。
ファースト・アルバム時点では、お互いの意思疎通に重きを置いてるように聞こえた部分が、今回はガッツリ組み合って、全体像をしっかり聴いてくれと言わんばかり。

ノイズとサンプリングがロックそのもののギター・ベース・ドラムと見事な融合をして、ヴォーカルを引き立てている。
やりたい音楽を現代的な感覚で追求する姿勢は、簡単にできるものではないだけに、頼もしい限りだ。

初夏にかけては、以前書いたように『DEAD FISH BOYS / Dedicated To Unbreakable Wish』(Straight Up RLCA 1211)を聞いていた。

コロナ禍直前の2020年2月に共演したGASTUNKが、現在のメンバーになって初めてリリースした『GASTUNK / Vintage Sprit , The Fact』(Mad Indian DOC-9055) も刺激的だった。

新たに加わったKeiの重たいドラムとBabyの独特なベースのリズムに、Tatsuの流麗なギターとBakiの深みを増したヴォーカルが加わると、The Cultが 『Sonic Temple』 で届けてくれた、Gothから脱皮した肉体的な躍動感と同じ、新しい息吹を感じ取ることができる。

夏には、『GAUZE / いいたかねえけど目糞鼻糞』(XXX XXX47)が登場。

驚いたのは、フグのヴォーカルが今までとかなり違うこと。
単語的な歌い方を切り開いたフグが、文節的な歌い方に変わっている。
とはいうものの、連射する言葉のスピード感は失われていないから、さすがだ。

GAUZEならではのバンドアンサンブルは、ベースの音で始まる一曲目から聞き手の心を鷲掴みにする。
連打されるスネアに、硬質なギターが加わると、至高の世界。早く一緒にライブをやりたい！

こんな感じで、2021年は記憶に残るリリースが多くあった。

他には、

VACANT / VACANTII
( TSPS/ stiffslack TSPS 001)

AUTOROLL、MIDNIGHT RESURRECTOR / AUTO RESURRECTION
 (HARDCORE KITCHEN HCK-051)

といったところ。

実は、夏以降海外のバンドの新譜を聴くことができるようになってきて、面白いのがたくさんあったので、そちらは次回。

じゃあね。

2022/1/7