第288回
1979 Revolt Into Style の巻

毎度お馴染みの、英チェリーレッドから3枚組のボックスセット『1979』が2022年1月にリリースされた。
以前『1977』と『1978』は詳細に書いたが、今回も良い内容だ。

タイトルは、1曲目に入っているBill Nelson’s Red Noiseの曲名なんだが、私にとってはジェージ・メリー(三井徹 訳)の本のタイトルの印象が強い。
ロックを勉強した基礎教本のような、昭和48年発行の”「反逆から様式へ。」イギリス・ポップ芸術論”(音楽之友社)がその翻訳。

1969年までのイギリス”ポップ文化”を、音楽・美術・ファッション・映画・TV・ラジオ・言語・文学・ジャーナリズムの切り口で教えてくれる。
まだ、The Beatlesが元気だった時代、新しいロックが始まろうとしていた時代の空気が読んでいると伝わってくる。

ブリティッシュ・ロックを系統だてて聴いている人ならば、この本を読みながら、ロック音楽を聴いていくと、より理解が深まると思う。

そして、この本の次にカーサル・フライヤーズのウィル・バーチ(中島英述 訳)が書いた「パブ・ロック革命」を読んでいくとパンク直前の時代がよくわかる。
もちろんパンクの時代は、ジョン・サヴェージ(水上はるこ 訳)の「イングランズ・ドリーミン」が決定打だ。
いずれにしても、まずは音楽を聴かないことには始まらないけどね。

さて、『1979』だ。

1979年の面白いところはなんだろう?

1977年のパンク熱は完全に終わっている。
だけど、その熱波は様々なところで効果を生んでおり、パンク精神を発展させた考えがパンク以前の世代とパンク直撃を受けた若い世代に伝播していったところだろう。

その代表として、一番最初に元Be-Bop Deluxe の Bill Nelson が結成した Red Noise の 「Revolt Into Style」 を持ってきているような気がする。

続いて、パブ・ロックからパンクへの橋渡しをした、Eddie And The Hot Rods「Media Messiahs」 を入れてくるあたりにも、ついつい ”やるねえ” と言いたくなってしまう。

もっとも、1979年にこの曲を初めて聴いたときは、”中途半端なハードロックになって、ロッズは終わったな” と思ったものだ。

Disc One の24曲は、1979年といえばこの人、Gary Numan の Tubeway Army「Me I Disconnect From You」 が入っているが、その前後は Patrik Fitzgerald と The Outsiders と渋いメンツがおさえている。

個人的には、Dead Fingers TalkのシングルB面曲「The Boyfriend」 から The Only Ones「You’ve Got To Pay」 の流れは、嬉しくなっちゃう。

Disc Twoは25曲。

Squeeze、The Clash、The Records、The Skids と続く冒頭は、個人的に、ヒット曲が網羅されている感じだ。

リバプール勢の Clive Langer & The Boxes と Echo And The Bunnymen が続く。

そして Gang Of Fou rと Joy Division。

マニアな私が一番喜んだのは、Cult Figures「Zip Nolan」のExtended Mix。

ついついシングル盤を取り出して聴き比べをしちゃう。

The Troggs の 「I Can’t Control Myself」 をカバーした The Teenbeats のファースト・シングルを、The Ruts「Something That I Said」 の次に入れてくるあたりも、”わかっているねえ” と言いたくなっちゃう。

Disc Threeは27曲。

XTC「Making Plans For Nigel」 でスタートするこのディスクは、完全にポスト・パンクに移行している。

一年のうちに、ここまで音楽が変わっていたとは、この3枚を続けて聴いていかなければ気がつかなかった。
とはいうものの、ヒット曲満載だ。

Public Image LTD「Memories」から The Monks「Johnny B. Rotten」 にニヤつく。
The Vapors、Madness、Secret AffairからDexys Midnight Runners「Dance Stance」の選曲は、最高のひと言!
3枚目の最後は、Notsensible「I’m In Love With Margaret Thatcher」で締めくくる。

全部で76曲、約4時間。

普通なら ”お腹いっぱい” と感じてしまうような容量だけど、リアルタイムでこの時代を経験している私は、”おかわり。もっと!” と言いたくなってしまう。

Boomtown Rats「I Don’t Like Mondays」、The Police「Message In A Bottle」、The Tourists「I Only Want To Be With You」と、この年に大ヒットした曲を追加して、プレイリストを作ると楽しいだろう。

モッズの復活、スカの復活、ネオサイケの登場、ハードコアパンク登場等々、たくさんの音楽的な変化が現れた一年間。

日本では、全く語られることのない1979年。

そろそろ、日本でもパンク以降のロックを真面目に見直さないと、世界との差が広がっちゃうよ。

2022/7/22

ライブの予定
9月 名古屋 今池まつり


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