第315回
”THE MURDER CAPITAL” の巻


2025年3月27日(木)、東京まで出向いた。

目的は、THE MURDER CAPITALを観ること。

今年になってから、ライブを観るために出向いたのは、IDLESに続いて２回目。


THE MURDER CAPITALを知っている人はどのぐらいいるんだろうか。

なにしろ、2010年代に暗い音楽をやっているんだから。

ポストパンク、ゴスが好きな人でも、ほとんどチェックしていないんじゃないかな。

だから、ちょっとだけ説明。

2018年にアイルランドのダブリンで結成した５人組は、2019年8月にファーストアルバム『When I Have Fears』をリリースし、今からプロモーションっていうタイミングで、2020年COVID-19の猛威によりライブ活動が中止になるという不運に見舞われる。

このファーストアルバム、Joy Divisionのような暗さに満ちていて、2019年のベストアルバムの一枚。

2023年1月にセカンドアルバム『Gigli’s Ricovery』をリリース。
かなりポップさを増しているが、ギリギリのところでざらついたインディーらしさを保っていて、このタイミングで来日するものだと思っていたら、全くその気配がない。

こうなったら、渡英してライブを観るしかないと思っていたら、2025年2月にサードアルバム『Blidness』をリリースし、ワールドツアーの初っ端で来日が決定。

しかも、東京で一回だけ。
こうなれば、東京に行くしかない。


ライブは、圧巻だった。

80年代だったら、黒づくめのメンバーが出てくるところ、Fontains DC同様 見た目は普通のお兄さんが登場してきた時に、”やっぱり、アイリッシュの感覚は？”と思ったけど、この普通さが今のバンドの面白さだ。

いきなり、冷たい空気が張り詰めたかのようなギターの音が出てきた瞬間、単純に”すげー”となってしまった。

気分は”ダブリン市民”になってしまったかのような、暗い路地に引きずられる感じ。
それも、治安の悪い地域の。

2曲目の「Moonshine」の爆発するかのような轟音で、今の位置に引き戻されて、そこからは一気に本編最後の「Don’t Cling To Life」まで彼らの世界で浮遊することが出来た。

当然アンコールもあり、「Love Of Country」は、彼らが進んでいくであろう方向を示しているかのようだった。

アンコール最後が3枚目のアルバム『Blindness』の中で最も好きな「Words Lost Meaning」だったから、満足度はピークに。


実は、このライブを観ながら、色々なバンドの音が頭の中に渦巻いていた。

一つは、EARTHのDylan Carlson。
初期のドロドロしたスラッジーが音ではなく、2005年の『Hex; Or Printing In The Infernal Method』での荒涼な原野で荒れ狂う風の中に佇むかのような、静謐な感じ。

もう一つは、80年代のペイズリー・アンダーグラウンドのバンド、Thin White Ropeのセカンドアルバム『Moonhaed』B面最後の「Crawl Piss Freeze」。
乾き切った砂漠で、遠くから聞こえてくる軋んだギターの音色の感じ。


不思議なのが、THE MURDER CAPITALのように、アイリッシュ感覚の強いバンドを見ている最中に頭に浮かんでくるのが、イギリスのバンドではなくアメリカのバンドだったこと。

バンドが色々な音楽を吸収して、自分たちの音として表現しているから、聴き手の心を刺激するんだろうな。

ライブを楽しむっていうのは、こういうことだったな、思い出したよ。


じゃあね。

2025/4/24