渡辺正 連載コラム#32

フジヤマで売ってないレコードたち。


the supremes/meet the supremes (motown/LP)

ダイアナ・ロスがメインヴォーカルのソウルグループ。このレコードはそのファーストアルバム。リアルタイムで貰った時は(誰に貰ったのか忘れてしまった)椅子に座ったジャケットだったが、あまりに音が擦り切れて買い直したもの。

子供心は純真で、たった1枚のレコードを毎日毎日飽きもせず聴いたものである。当時はビートルズと、このシュープリームスが人気を二分してたような気がする。私にとっては、ビートルズはリアルで新しく、過激に映ってたのに対して、シュープリームスはほんのりした、アメリカの豊かなイメージを抱かせて、まだ見ぬアメリカに夢見てた。

子供の頃はアメリカはひどく豊かに思えたのである。フローリングの部屋にでっかいソファとアールの角の大きい冷蔵庫。いかしてた。対して、わたしんちは氷を入れて冷やす木製冷蔵庫が貧相に見えた。

そんなだったから夢はあちこちに散らばっていた。ちょっとした事にも昨日と違う今日があったし、今日より明日が楽しみに思える毎日。昭和30年代のイケイケ時代の事である。子供だったから金の心配なんてない・・・というより、ないのが当たり前だから「お金ってなに?」という感じ。

だから、せっかくのレコード盤は懲りもせず聴いたし、この頃のシュープリームスには夢があった。音楽に夢があったのか、当時の私に夢があったのか、どっちにしても夢多き時期だったんだろう。

たまに思う事がある。

昔はレコードを大切に聴いてたなあ・・・と。擦り切れるほど聴いたんだ。そう思うと今がなんて汚れているんだろう・・・なんて、らしくないこと考えたりして。

2002/3/15


コラムindexB.N.