渡辺正 連載コラム #42

フジヤマで売ってないレコードたち。


jane birkin/lolita go home(philips/LP)

70年代のバーキンはいかしてた。

今じゃすっかりふてぶてしくも貫禄充分な姉御だが、ヒップ映画の「ナック」にチョイ役で出てたバーキンのお姉ちゃんぶりは、ハスッパでPOPそのものだった。

私、実は隠れバーキンファン。隠す事もないけど、隠す方がちょっと収まりがいい。

なにせロリータっつうお約束で、ゲンズブールあたりと遊んでた人だから、いいオヤジになった私がバーキン好きを公言すると、「渡辺さんは少女に振り回されるの好きなの?」と聞かれる、必ず。

まあ、振り回されたよ、随分。でもそれとバーキンは関係ないと思うんだけどなぁ。

振り回されない恋愛なんて、この世にありゃしませんて。

好きで振り回される訳じゃない、純度の高い恋愛ほど思いのほかブルンブルン振り回されてしまう、そんなもんだ。阪神の星野投手の90キロぐらいの山なりスローカーブに強振してしまう中村紀みたいなもんだ。私、恋愛の全打席ホームラン狙い。従って三振多し。

いや、これ若い時の話。今は分別ついてますから、たまには流し打ちもしなくちゃって、臆病者に変身したりして。そんなテクもないくせに。

バーキンのこのアルバムは、アメリカのスタンダード唄モノの名曲が何曲か収録されていて、少女なりの妖しい歌声が気持いい。かすれ高音ぐあいもバーキンのバーキンたる面目躍如盤。

他の人がこんな声で唄っちゃいけません、バーキンだけにしときたい。

私のバーキン見つけなきゃ。今のバーキン怖過ぎだから、あくまでも70年代の彼女のような人を見つけたい。って、そりゃ虫が良すぎ?

2002/7/4


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