渡辺正 連載コラム #57

フジヤマで売ってないレコードたち。


charlie parker/fiesta ( verve/LP )

天才パーカーの、悲しいレコード。

問題は、ラテンの巨匠「マチート楽団」とジョイントした、なんともチグハグな陰と陽の衝突。僚友ディジー・ガレスピーがラテンで楽しく演奏し、人気者になったからって、パーカーもいっちょやったるわい、と考えたのかどうか定かではないが、これはすこぶる「変な」レコードになってしまってる。マチートの鉄壁なアンサンブルに、天才パーカーが泣きながら喧嘩売ってるような出来。ラテンだからって、自分を曲げないでバリバリ吹くアルトに、この人の正直さをみる。

ラテン特有の洒落たブレイクも、パーカーがギトギトに埋めていってしまうから、気持ちが高揚しない。こんなにラテンって、変だっけ?

自分のバンドセットでのラテン曲は、気持ちいいアルトで、さすがに聞惚れてしまうのに、マチート楽団でのパーカーは、「悲しい」。

で、このレコード好きかって?

私は大好きさ。

斜に構えて気取ってない、その姿勢に「グッと」くる。

2003/2/4 


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