●今回よりバンド「わがままな月」のヴォーカルゆかちゃんの新連載がスタートしました。



 第1回  うちには14歳になる雌猫がいる。

友人知人連中からは「性格が悪い」と言われる嫌われ者である。

が、その正体はチョーーーーー臆病者。要するに飼い主以外はだれでも恐い。



本当はだれにも見られないところでひっそりと身を隠していたいのだが、うちに来る人たちは猫がいるのを知っているので、彼女に触ろうとして追いかける。
するとハァーーーー!!!!と威嚇し、それでも近づいてくる人間は、とにかく、とにかく、ひっかき、かみつく。

一度新幹線に乗せて実家に連れて帰ったときは、緊張が度を超して、新幹線の中で泡を吹いた。ほんとーに、蟹みたいに口からぶくぶくと泡を吹いたのである!

私は「新幹線がこいつの墓場になるのかな」と真剣に思った。

それでも動物というのは、たくましい。

今年の春のことである。私は1週間ほど家をあけることになった。この、だれからも預かってもらえない猫をどーしよーと思ったが、幸い通い夫のR氏が面倒を見てくれるというので(一応じっとしてれば威嚇はされない程度になついているが、ときどき横を歩いただけでかみつかれる)運を天に任せた。

ちょっかい出すとかみつくよ、とさんざん言い含めておいたので、人間のほうは知らん顔を決め込んでいた。らしい。最初の2、3日は遠くから怪訝な表情でながめていた。らしい。4、5日すると、人間が食っている弁当を分けろと言ってきた。らしい。

最後の1、2日はなんと!猫特有のゴロゴロ作戦で、足にスリスリしたらしい!たった1週間で、彼女は「飼い主」の認識をあっさり更新してしまったのだ!

そして、スリスリの翌日に私は帰ってきた。

そしたら新しい飼い主のことは忘れちゃった!R氏は元の木阿弥、またかみつかれる日常に戻ってしまったのである...。ま、これが猫ってもんですかね。

生きていくってことは、難しいようで案外簡単なのかも。と、猫を見ていて思った私であった...。

2002/12/14


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