『2001:テロよりも重かったこと』

ジャック・マイヨールが首をつって自殺したのは、なんとも暗い年であった、2001年12月も終わろうとしているころだった。

ご存じのようにジャック・マイヨールは有名な潜水家で、素潜りで水深100M以上を記録したほどの達人である。

そんな人が、どうして自殺しなければいけないのか。

達人である以上、凡人よりも、生きるということの意味に近づいている人なわけで、そういった人が、しかも70才を過ぎてから、自ら命を絶たねばならない、その意味は果てしなく、その後を生きる我々にのしかかってくる。

こんな時代に、せこいことをしながら、まだ生きている自分が、なんとも、むなしい。ほっておいても死ぬが、自ら死を選ぶ意味を、探さずにはおられないではないか。

ジャック・マイヨールが深海で見たもの、聞いた音、感じた感覚は、なにだったのか。それは冥府に持っていかれてしまった。

神秘がまたひとつ、空に消えた。

JOJO広重  2002.1.24.


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