l i v e   m e m o l y   # 1 1     z e t s u b o u - n o - t o m o      ( C )   f u j i y a m a

第11回  絶望の友

三軒茶屋に本格的なライブハウスが出来た。ヘブンスドアという。フジヤマのすぐ傍だから、オーナーの堀さんも、その準備に忙しい中、オープン前にわざわざ挨拶に来てくれたりして、いい感じだった。

もうだいぶ、前の事になるが、そのヘブンス開店当時のちょっとした事件。

ヴァイオレンスバンド(?)でもあるまいに、ステージと客側に太いパイプが仕切られていて、不自由極まりない、と私文句言った、堀さんに。新しい自由空間を作ろうと、徹夜で話したのに、ありゃなんだ!というわけだ。客もまばらなフォーキーなバンドのライブを、何回か開店早々のヘブンスで見てたから、悲しくなったんだ。不自由だぞ、空気重いぞ、堀さん。この間の話は何だったの?と。

安全策との事だったが、そういう時だけセッティングすればいいだけの事だと、ヤケに力説したのを、覚えてる。

なぜか、その忌まわしい鉄柵はそのままだった。

そんなある日、「絶望の友」というバンドを組んだ二人、佐藤君と弓削君がフジヤマにやってきた。

二人が、ヘブンスドアってどんな感じ?というから、私は正直に「空気固い!いらん鉄柵馬鹿みたい!」

旧知の佐藤君は、私の性格を熟知してるから、また怒ってるな、ってな感じで笑ってたが、弓削君は一言「壊しましょう!」

夜、ヘブンスドアの「絶望の友」ライブ、静かに切ない音楽で始まる。客ほぼ20人。されど、頑固に鉄柵あり。弓削君一曲終えて、やおらマイクに向う。

「動物園じゃないんだから!」

「なんか不自由だと思わない?」

目の前にある鉄柵をはずし始める、なんか静かな音楽に怖い情景。

どうなるのか、一部始終を見てた。へたなライブよりスリリング。男らしいぞ、弓削君。

ルールは自分達で作るものだ。おしきせのルールに甘んじてロックが出来るか?と、首に下げたタンバリンも言ってるぞ!弓削君。

悠然と、その光景を見てるだけの佐藤君も偉い。たまに、ビョーンなんてギターの弦弾いたりしてる。

凄いバンドだ、絶望の友。

2003/2/6


[photo] 吉祥寺マンダラ2の楽屋前での「絶望の友」の3人 多分解散ライブ時だと思います。  p h o t o   b y   T A D A S H I    W A T A N A B E


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