c o l u m n        h i d e m u s h i   o n o d e r a         r a k u g a k i   n o   g a   #14           ( C )   F U J I Y A M A 



  i l l u s t r a t  i  o n    &   t e x t     b y   H I D E M U S H I   O N O D E R A
尾野寺秀虫の落描きの    第14回  2004/7/14

〜記憶〜

子供の頃、鬼婆をみたことがある。

子供の頃住んでいた家の玄関には曾祖父が彫った般若の面(曾祖父は能面なども彫っていた)や叔父が作った鷹だったか鳶の剥製などが飾ってあった。
子供ながらに何でこんなの飾るんだろう、と思っていた。ちょっと怖かった。

鬼婆は、時々その玄関に座って休んでいた。いつも、何処からか奪ってきたであろう宝が入った風呂敷包みを背中に背負い、何とも言えない悪臭(なんか生臭い)を出し、何を言っているのか解らないがベラベラしゃべり、たまに大声で笑う口には前歯は所々しかなく、下のとんがった歯が前の方にとび出ていた。顔はドス黒くシワシワで髪の毛はチリチリ。角は布をかぶって隠しているがたまに象牙色のが2本ちょっと飛び出している事があった。包丁も持っていてたまにちらつかせ威嚇している。いつも部屋の陰から覗いていた。いつか喰われるのではないかと思っていた。すごく怖かった。

と、ずっと記憶していたのだが、この記憶は一体何なんだと、いつだったか母親に「子供の頃、家の玄関に風呂敷を背負った鬼婆がいたが、あれはいったい何なんだ?」
と尋ねたところ、魚売りの行商のおあばちゃんだったことが判明。

記憶とは結構いい加減。こんないい加減でどうでもいい記憶をこれからも忘れない様な気がする。
(お知らせ)
先日、泉邦宏さん(I.M.O.、渋さ知らズオーケストラ、凡かす、藤井響子オーケストラ、etcのサックス吹き)のソロアルバム「馬鹿が牛車でやってくる」のジャケットを描きました。
暑い夏にはぴったり?の(俺ワールドミュージック?)です(^^^)是非聴いて頂きたいです。



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