第207回
”行き過ぎてしまった映画『SCUM』” の巻
映画の字幕監修を『THIS IS ENGLAND』に続き久しぶりにやらせてもらった。
その映画は『SCUM』というタイトルの作品。
”うっ、Scumだって、Napalm Deathじゃないか”と思うあなたは必見です。
いや、本当のところ、この映画パンクな人は見ておいた方が良いかもしれません。
パンクな人ならば、『長距離ランナーの孤独』とか『時計仕掛けのオレンジ』は勿論見ていると思うし、当然のように『さらば青春の光』は見ていると思う。
そんな、パンクな人向けの作品の真骨頂と言える。
なんたって、1977年にBBCのテレビドラマとして作られたにもかかわらず、あまりのえげつなさに、放送禁止になったものがオリジナルだ。
「字幕をやったの?」と言って来た当時イギリスの映画館で観た友人は、
「ひどい映画だよね」
「二度と観たくないよ」
「(ジョン・ライドンに)だまされたよ」
等々、ネガティブな言葉の連発。
30年以上経っているのに、悪い印象が頭の中に残っている訳だ。
当時のイギリスのパンクは、この映画を見ていろいろ考えたんだろうな。
パンクやっているような奴は、失業手当をもらうことが仕事だったもんな。
昼間から公園でたむろして、遊んでいたもんな。
どうしてここまでネガティブになるかと言えば、
内容が英国映画特有の、陰鬱さに満ちているからです。
その陰鬱さも、暴力というか、権力に抵抗する表現が多いため、
マイナス方向に向かって行くのです。
なんたって、イギリスの少年院を描いているんですから。
体制側の”クズ(SCUM)”たちの下で"クズ(SCUM)"な連中が生きて行く、
どうしようもない程”NO FUTURE”な映画です。
主人公カーリンを演ずる、レイ・ウインストンの迫力あふれる目つきにすべてが集約されています。
『さらば青春の光』で、ジミーの幼なじみのロッカーズ、ケヴィンを演じたあの男です。
そう、風呂場で「Be Bop A Lula」を歌う奴です。
何しろ、ロンドン・イーストエンドのハックニー出身のボクシング少年だけあって、動きが素早い。
その俊敏な動きを見ているだけで、”こいつとはやりたくないなあ”と思わせる次第。
これだけの情報で、だいたい察しが付くんじゃないかな。
ついでに書いておくと、小賢しい奴の役で、『さらば青春の光』の主役フィル・ダニエルズも出ています。
内容は、敢えて書かないけど、観終わったあとに幸福な気持ちにはなれないので、
アメリカのメジャーな映画に馴れている人は、キツいでしょう。
体制に対する、強烈な社会批判をすることが許されないような雰囲気のある、
今の”ちょっとおかしな”日本の社会状況下、この作品が上映されることが、大切。
10月11日より、新宿シネマカリテにてレイトショーです。
あ、R15+です。
2014/10/6
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