第214回

Music Paper の巻


このエッセイ、マメに更新しているつもりだったけど、5月8日に書いたものが最後になっている。
実は、5月の末から下書きは結構たくさん書いたのだけれど、どれも面白くないので、渡辺さんに送るのをやめている。

多分、7回分くらいは書いていると思う。

でも面白くないんだよね。

書いている自分が面白くないんだから、読み手に伝わるわけがない。
で、開き直って自己満足な文章にすることにした。


今回は、昨日(2015年8月3日)我が家に届いた音楽新聞”New Musical Express”(2015年8月1日号)のことでも書こう。

NMEって言えば、大方の人はわかるよね。
イギリスの音楽新聞だ。

週刊で、私は洋楽を聴き始めた頃から知っている。

日本の音楽誌”ミュージック・ライフ”にイギリスの音楽チャートが載っていて、その欄で存在を知ったわけだ。

初めて その新聞の現物を見たのは高校生の頃、東京の原宿竹下通りにあった”メロディ・ハウス”っていうレコード店。
当然英語の新聞なので、内容はよくわからないけど、なんか興奮したことはよく覚えている。
紙面をぺらぺらめくっていたら、Genesisの写真を見たような記憶がある。

大学に入って名古屋に出るようになってからは、ヤマハの名古屋店にも置いてあったので、レコードの宣伝と写真を眺めていた。
もっとも、名古屋で洋書を置いている店には、別の音楽新聞”Melody Maker”が一月遅れで定期的に入ってきて、時々買い求めていた。

何しろ、買ってきたら家で辞書を片手に読み進めるのだが、英語の文法をしっかり理解していない上に辞書にない単語が出てくるので困り果てていたものだ。

1976年頃、イギリスには上記の二つのほか”Sounds”と”Record Mirror”と大手の週刊音楽新聞が4つあった。
他にも、”Music Week”があるじゃないかと突っ込まれそうだけど、業界紙なので普通の音楽ファンはほとんど読まなかったと思う。

1977年になるとNMEとSoundsはパンクに傾倒し、MMはオールド・ウエイブと呼ばれた非パンクに力を注いでいた。
RMはチャート系の音楽をメインにしていた。

1979年頃にはSoundsはパンクからNew Wave Of British Heavy Metalに路線を変更。

一大センセイションを巻き起こした。


このように、音楽新聞の力が大きかったのは、1980年代初めの頃が最後で、その後はブリット・ポップ等いろいろなブームを作ろうと話題を提供するものの大きな波を作ることができなかった。

アメリカでグランジ・ブームがアンダーグラウンドなものから世間一般に認知されだした1991年の4月6日号で、グランジ・ブームを引張ていたSoundsが突然終わってしまった(定期購読をしていたので、払い戻しの手続きが一方的で、なんか損した気分だったことをよく覚えている)。

時を同じくして、Record Mirrorも終刊してしまった。

残った音楽紙はNMEとMMになったのだが、どちらも同じような内容だなあと思いつつ、定期購読していた。
MMは私の大好きなバンドTindersticksに好意的なこともあり、肩入れして読んでいた。

2000年になるとMMは新聞サイズからA4サイズに変更しカラフルになった。
しかしこの年のクリスマス特別号を最後に、次の号は送られてこなかった。

”来年も楽しみに”ってクリスマス号に書いてあったのに。


21世紀になると、ついにイギリスの音楽新聞はNMEだけになってしまった。

ここで多くの人が、”週刊なら、Kerrangがあるんじゃないの?”って疑問を持つと思うけど、1981年にスタートした”Kerrang”は週刊誌として存在しているが、Music PaperではなくMusic Magazineなので、音楽新聞はNMEだけということになる。


最後の音楽紙NMEが昨日届いた号で終わってしまった。
これで定期購読していたイギリスの音楽新聞は全てなくなってしまった。

スペシャル・イッシューは、60年以上に渡る表紙が50ページあり、パンク以降の表紙が45ページ占めているから、なんらかの形で読んだことあるし、うち35ページ分は今でもすぐに出すことができる。

最終号は特別版なので、通常のものは先週のもので終わったことになる。

実質的な最終号の表紙はSLAVES。
なにそのバンド?っていう人が多いと思うけど、実に格好良いイギリスの二人組のパンク・バンドなのです。
彼らのライブ、2013年に偶然見たが、もう一度確かめたくて、今年の6月にイギリスでライブを体験してきた。
はっきり言って、”ここは1977年か!”って思うくらい、凄まじいライブでした。
何しろビール瓶とコップが宙を飛び交うし、つばも飛び交うし、人は頭の上を飛び交って、おしくらまんじゅうとポゴの嵐。

THE CLASHのミュージック・マシーン連続公演やUK SUBSのロンドン・ライシアムのライブ映像を彷彿させる、It’s Only Punk な雰囲気。
そんなバンドが表紙になった号が、最後っていうのも、先端と異端を取り上げるNMEらしいと言えるかもしれない。



ここからが、インターネットの発達で世界が狭くなっている時代の話になる。

紙媒体の音楽新聞は無くなったのだけど、実はウェブ・マガジンになって、NMEは存在している。
驚いたことに、日本語版も7月に開始している。

今まで、年間4万円近く出して、イギリスから購入していたものが、なんと無料で読むことができる。

日本語でも。

2000年以降、音楽情報は紙からウェブに以降している。
一番有名なのはアメリカのPitchforkかな。
イギリスの音楽情報のウェブ・マガジンにしても結構な数ある。
その上、イギリスに行けば、無料で紙の情報誌を入手することもできる。
ウェブ上では、過去の記事も読むことができるから、便利なことこの上ない。

ただ、私のようなおじさんには、紙の音楽新聞がなくなってしまったことが残念なんだけどね。

もっとも、NMEは9月18日からフリー・ペーパーで復活するらしいので、送ってもらえるように、また申し込まないといけないな。

2015/8/4

   

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・

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BLACK LODGE FEAST OF BLOOD #2
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