第231回
”BOXセット?” の巻


レコードを買い始めた中学生の頃、レコード店に行くとその道の達人のようなおじさんが、

”やっぱり原盤は音が違うねえ” とか、”今回のマスターはいいね”

みたいなことを言っていた。

全く何の話か、全く分からず、”大人になって、こんな話ができると格好良いなあ” と漠然と思っていた。

2〜3年レコード店に通うようになり、少しだけ知識が増え、まだ聞いたことのない自分が欲しいレコードが多くなってくると、”なんで、あのおじさんたちは同じものばかり、何枚も買うんだろう?” と思うようになってきた。

その頃、私は ”一枚でも多くのレコードを聴きたい”気持ちが強くて、知らない音楽を聴くことが楽しくてしょうがなかった。

おじさんたちは、”今度のボックスにはアウトテイクが入っているんだよね” とか、また全く訳の分からない話をしていた。

その頃、ロックはまだ若い音楽だったので、新譜が次々発売されて、過去を振り返るようなものではなかった。

困ったのは、ラジオで偶然聞いた2年前の新譜を聴きたくても、廃盤になっていることが多くて、どうやったら聴くチャンスがあるのか分からなかったことだ。

高校に入ると、少しだけ世界が広がり、隣町のレコード店や中古盤を売っている古本屋の存在を知るようになった。
名古屋に行けば輸入盤だって買えることも。

もっとも画期的だったのは、通信販売で輸入盤が買えることを知った時だ。

しかし、それは現在とは異なり、海外のレコード店ではなく東京や大阪の輸入盤店での購入なんだけどね。

これで、少し前の新譜を聴くことのできる機会が、大幅に増えた。

相変わらず、ひたすら新譜を中心に聴いていたので、過去のものを聴くようなタイプではなかった。


解散してしまったバンドよりも、新しいバンドが興味の対象だ。

パンクの時代になると、LPレコードからシングル盤を求めるようになり、未知のバンドと出会うことをひたすら楽しむようになった。

パンクとのの出会いから、40年経つ今年、様々なBOXセットが出ている。
RAMONES のファーストアルバムもBOXになった。

そういえば、Sex Pistols も結構たくさんBOXセットが出ているな。
The Clash も同様だな。
現在活動していないバンドほど、過去の音源を発掘して再発しているな。

まあ、自分たちもBOXセットを作ったので、あんまり人のことは言えないな。


だけど、聴き手としては、相変わらず新しいバンドに夢中だ。

今年のお気に入りは、ロンドンのガレージ・ロック・トリオ、YAKの 『Alas Salvation』 とカルフォルニアのポスト・ハードコアパンク・トリオ、Super Unison の 『Auto』 だ。

YAK (Yuck じゃないよ)は、昨年渡英した際に名前を見かけて気になっていたバンド。
”何しろ、うるさい” ということだったので、どんなバンドかシングルを探していたら、3月にNYに行った時に Rough Trade で発見。

レーベルは Jack White の Third Man だった。

ジャケットがこれまた傑作で、子供が書いたような色使い。
この時点で、合格だよね。
レコード盤に針を落としたら、音圧が異常に高い爆音が飛び出してきて、圧倒された。

そして、初夏に出てきたファースト・アルバムが 『Alas Salvation』。
何しろノイジーでイケイケ。
Drenge や Slaves もびっくりしちゃうんじゃないかと思わせる、威勢の良さだ。

この文章を書こうと思って調べたら、PULPのベーシストSteve Mackey がプロデュースしていた。
アルバム後半の出来のポップさは、彼の手腕によるものなのかと、納得してしまった。
何も知らずに「Please Don’t Wait For Me」をラジオで聞いたら、Be Bop Deluxe辺りのモダン・ポップの後継者って思うに違いないから。

Super Unison は Meghan O’niel Penny(Vo、B) が Punch 解散後に始めたバンド。
当初は4人組だったが、現在は Kevin Defranco(G)、Justine Renninger(Dr) のトリオになっている。
偶然Rolling Stone の記事を読んで、Bandcamp で試しに聞いてみたら、圧倒的にパワフルな女性ヴォーカルが90年代後半の Dischord の音で迫ってくるじゃないか。

もうこの時点で、ノックアウト。

アルバムを楽しみに待っていたら、今秋に 『Auto』 がリリースされた。
バンド名を拝借した Drive Like Jehu の影響も強く感じることができると同時に、パンクならではのタイトでスピード感に満ちている。
Meghanの声は、Babes In Toyland の Kat や Muffs の Kim 同様、ワイルドで聴くものの心にダイレクトに入ってくる。
奥行のある音作りは、Deafheaven や White Lung 同様、今のロックの音だ。
プレーヤーに乗っけると連続再生しちゃうので、取り扱い注意なんだけどね。


最後に、若かった時に思ったことを、自戒を込めて付け加えておこう。

”なんで、あのおじさんたちは同じものばかり、何枚も買うんだろう?” と。


じゃあね。

2016/11/30

 
 

 

・・・・・・・原爆のライブ予定・・・・・・・

12月4日(日)名古屋 大須 UNLIMITS
GASOLINEプレゼツ「前座の王さま」GASOLINEvsTHE 原爆オナニーズ
共:GASOLINE
開場 18:30 /開演19:00
前売り 2,400円 当日2,900円(D代¥600別) 
■問合せ:大須アンリミッツ 052-684-5652

1月28日(土)東京 新宿 Loft
「東京ロックミーティング」新春特大号

共:THEノウ
Ruler
THUNDERROADES
RONRONCLOU
MORG SIDE CINEMA
SYAS
THeCOMMONS
RANGSTEEN
WOTZIT
Burning Rubber
Little Elvis Ryuta & S.R.F
BEAT CARAVAN
THE BROKEN HEARTS and More
DJ:DADDY-O-NOV
MASAO NAKAGAMI
RYO THE DYNAMITE
START14:00、CLOSE22:00
前売り 3,000円 当日3,200円(別途ドリンク代) 
■問合せ:新宿 Loft 03-5272-0382


1月29日(日)名古屋 今池 ハック・フィン
2YOU MAGAZINE 10the Anniversary
nice2meetYOU vol.01
共:OLEDICKFOGGY
開場16:00 開演 17:00
前売り 2,500円 当日3,000円(別途ドリンク代)
■問合せ:ハック・フィン 052-733-8347


2月11日(祝・土)名古屋  Club Quattro
お年玉GIG 2017
共:GAUZE、Unholy Grave、BRAHMAN 
開場16:00 開演 16:30
前売り2500円 /当日 2800円(別途ドリンク代 500円)
■問合せ:名古屋クラブクアトロ 052-264-8211
※遠方の人も、帰ることができるように、20時頃には終演予定です。