第237回
”Gabba は NO AGE” の巻
6月16日(金)に名古屋のレッド・ドラゴンでFUK、鉄アレイ、タートル・アイランドのライブがあった。
午後5時過ぎに自宅を出て、途中から(偶然だけど)タートルのメンバー奥崎君の車の後ろを名古屋までずーっとついて行った。
7時半少し前に会場に到着すると、いきなり Gabba が ”橋の下フェスティバルのライブ、良かったよ!”
って駆け寄ってきた。
キョトンとしているFUKのメンバーに ”彼はすごくいいパンク・バンドをやっているんだよ”
って紹介をしてくれる。
ライブ終了後、タートルの竹舞が記念写真撮ろうと言ってなぜか私も入り込み、皆で写真撮影。
記念写真撮影後、Gabbaが話しかけて来た。
そこから、約40分近く立ち話で色々面白い話を聞くことができたので、今回紹介していこう。
承知の人も多いと思うけど、Gabba は Chaos UK の人だ。
だから、パンク第2世代の”ハードコア・パンク”になる。
以前、このエッセイで書いた、モノクローム・セットのアンディはパンク第1世代で、私と同じ年なのだが、Gabba
はもう少し若い。
この微妙な年齢差が、実は大きなギャップになるから話を聞くと面白いことばかりだ。
彼の両親は音楽好きで、父親は Blue Beat のシングルを、母親はサイケデリックを聞いていたそうだ。
両親の影響を受けつつ、Slade や Sweet
といったグラムが好きになり、なかでも 「Tiger Feet」
のヒットがあるMUDはお気に入りというから、好みは私に似ている。
少し大きくなってスケボー少年になった頃に、パンクの直撃波を受けてしまった。
The Cortinas が話の端々に出てくるところは、いかにもブリストルならでは。
”The Cortinas、Models それから・・・えーっと、そう Sham69
がやった、Step Forward のツアーは、PAを Groundhogs のドラマーだった
Ken が手助けしたんだ” と教えてくれる。
”Groundhogs の?” って聞き返すと、
”そう、彼は今72歳だけど、現役でバンドをやっているよ、XTCのギターとね”。
もう腰を抜かしそうな情報も飛び出てくる。
”パンクバンドで好きなのは、The Boys に The Lurkers” って言うから
”「Shadow」だね” って返すと ”俺の好きなのは「Freak Show」だな、I
Don’t Wanna Go Be In A Freak Show”
って返してきた。
”で、もっとびっくりなのは、後に The Lurkers のメンバーになったことさ。
なんたって、となりに ジョン(Honest John Plain:The Boysのメンバー)もいるんだから、”
だって。 次々と、興味深い話が出てくる。
ここから、彼ならではの面白い話が出てくる。
”ブリストルというと、みんな Vice Squad 以降の Riot City を思い浮かべるけど、ブリストルのパンクは
Heartbeat さ” と言い切る。
あまりにも嬉しい言葉に激しく同意して、”The Letters を始め、数枚シングルをオリジナルで持っているよ”
って言うと、”だけど、日本でも同じだと思うけど、自分の国のものはあまり見向きされないんだよね、イギリスだとアメリカのパンクばかり注目さ。”
言われてみると、イギリスで大きなフェスティバルに行くと、アメリカのバンドの比率が高いし、ライブ会場でもアメリカのバンドは結構大きな会場でやることが多いことに気がつく。
イギリスのバンドは小さなパブで見ることが多いことにも。
ハードコア・パンクは ”日本のハードコア・パンクが大好きで、City Rocker
のレコードや Great Punk Hits のカセットを手に入れて、日本のバンドに手紙を書いた
ところ GISMのサケビと Execute
のレミーから返事がもらえたのは嬉しかったね。
また、Execute のレミーの英語は上手だったよ。” と。
”日本のパンクというと、スターリンが有名だけど、コンチネンタル・キッズや関西のバンドを注目していたんだ。”
だから、”日本に来るとレコードをいっぱい買い込んじゃう。
原爆の 『At Last』
はびっくりするような格安で手に入れたよ” だって。
Discharge のことはどう思っているのかなあ?って考えていたら、”Discharge
は最初の3枚のシングルと 『Why』 迄が好きだね。
メタルぽくなってからはどうもねえ。
うちの母親は 『Why』
をサイケデリックなアルバムって言うんだよね。
The Seeds みたいだって。
えー The Seeds の曲 うーん …て考え出すから、
” 「Evil Hoodoo」 じゃないの” って言ったら、
”そう、あのギュインギュインみたいだって”。
言われるまで気がつかなかったけど、言われてみると納得。
いろいろな聴き方があるもんだ。
他にも、1980年前後のポストパンク期に Magazine の前座で
Bauhaus を見たことや、Killing Joke や Joy Division
のことを話してくれた。
そしたら”ブラットって知っているか?” と訊いてくるから、”綴りはbra・・”
と応えると
”BLURTさ”
私は、てっきり ”ブルート” と読むものだと思っていたので、綴りを聞いて
”知っているよ” と答えると、”彼らこそ、パンクそのものだよ”
と話を続ける。
Blurtはサックス、ギターにドラムの3人組。
どちらかというとジャズ的なアプローチが特徴だったバンドだけに、ハードコア・パンクの人が聴くとは思っていなかったので、驚いた。
やっぱり、Gabbaはパンク・レボルーションの実勢を体現しているから、その音楽に対する興味の幅の広さは半端じゃない。
”最近は、橋の下に出演したように、Scumputer
というのをやっているんだ。
いろんな音楽をミックスして新しいものを作り出すのさ。
まさに「Born in Bristol」な感じさ。”
あえて聞かなかったけど、Portishead や Massive Attack もブリストル出身だから、トリップ・ホップ(Trip-Hop)もごく当たり前に自然に吸収しているんだろうな。
話が永遠に続きそうな勢いだったが、タートルのヨシキが
”帰るね” って挨拶に来たので、便乗して帰ろうとしたところ、
”FUKの他のメンバーは僕の半部くらいの年齢で30歳くらいだから、いろいろな人に年齢差のことを言われるんだよね。 だけど、そんな時いつもこう答えるのさ「俺はNo Ageだ」って。”
そうだよね、年齢差なんて考える暇はない。
Gabbaは最後に念押しのように、私に言ってきた。
”あなたが私より年上なのは知っているよ” そして付け加えた。
”これから、No Ageでいこうぜ!”
2017/6/20
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