第243回
”2017年によく聴いたもの” の巻
一年の総括です。
先ずは、洋楽から。
再発モノのことばかり書いていたけど、実は新譜もしっかり聴いております。
先ずは10枚から。
Protomartyr / Relatives In Decent (Domino)
The National / Sleep Well Beast (4AD)
Priests / Nothing Feel Natural (Sister Polygon)
Flat Worms / Flat Worms (Castle Face)
Queens Of The Stone Age / Villains (Matador)
Converge / The Dusk In Us (Epitaph)
Mogwai / Every Country’s Sun (Rock Action)
The Horrors / V (Wolf Tone)
Autobahn / The Moral Crossing (Tough Love)
Perfume Genius / No Shape (Matador)
他には
Girlpool / Powerplant (Anti)
Elbow / Little Fictions (Polydor)
Dutch Uncles / Big Balloon (Memphis Industries)
日本では、全く話題にならないような作品が多いです。
トップのProtomartyr(プロトマーター)は、デトロイトの4人組ポストパンクバンドの4枚目。
バンドの写真を見ると、いかにもラストベルト地区に住む見放された人達って感じで、現在のアメリカ中西部を体現している。
音はThe Stooges的な、やり場の無い投げやりな暴力性と、Bauhausの耽美性を併せ持つ、摩訶不思議な魅力を放っている。
ある意味、Joy Divisionの『Unknown Pleasure』と同じようなベクトルも。
Iggy Popが『IDIOT』で見せた閉塞感を、今のアメリカに置き換えたかのような感覚は、まさに2017年ならでは。
次のThe Nationalは、オハイオ州出身の5人組で、今や欧米ではトップクラスの人気を誇るバンドの7枚目。
本作はイギリスではチャートで1位を獲得しています。
ぶっちゃけた話、バリトン・ヴォイスのヴォーカルにしっとりとした大人のロック。
前2作よりは溌剌とした印象。
もしこのバンドを初めて聴いてみようかなと思うならば、4枚目の『BOXER』が一番だと思うけど、トランプ政権下のアメリカの空気を感じ取りたいなら、このアルバムは最適な一枚だと思う。
直接的な表現は控えているが、人の深層を読み解くような歌詞は捉え方によっては鋭い社会批判になっている。
Priestsは、ワシントンDCの4人組パンクバンドのファースト・アルバム。
DC出身なんだけど、Dischord系ではなく、Rough TradeのThe RaincoatsやAu Pairs、Girls At Our Bestといった、イギリスのバンドを思い起こさせる。
ポストパンクな1曲目からサーフ感覚を取り込んだ曲へつながる冒頭の2曲で、いきなりノックアウト。
パンクは自由奔放に自らの思いを発散してこそって、思わずにいられないような出来映え。
Flat Wormsは、LA出身の3人組による猛スピード・パンクバンドのファースト・アルバム。
メンバーは・・・
Will Ivy(Gt:Bridez)
Tim Hellman(B:元Thee Oh Sees)
Justin Sullivan(Dr:The Babies)
何しろギターがブンブンにノイジーで、ボーカルが気だるくって、リズムはタイト。
直近では、MeatbodiesやMETZやParquet Courtsのファーストアルバムに迫る文句無しの格好良さ。
続く、Queens Of The Stone AgeとConverge は説明不要だろうな。
Mogwai とThe Horrorsも。
Autobahnは、リーズの5人組ポストパンクバンドの2枚目。
Sisters Of Mercyを産んだリーズという土地柄なのか、簡単に説明するとゴシックテイストの強い演奏にダークなヴォーカルが乗っかります。
何しろ、深い溝の奥から聞こえてくるようなヴォーカルの声が良いです。
また、一つのパターンを執拗に繰り返すマーチングのようなドラムは新鮮。
こういった作品は、何年か後にマニアが再発見するんだろうな。
Perfume Geniusは、シアトル近郊出身のシンガーソングライターの4枚目。シンガーソングライターといっても、ギターの弾き語りではなく、Marc Almondみたいにエレクトロニクスを使ってソロ活動をしている。イメージ的には、Antony & JohnsonsやJohn Grantが近い。色々な音にヴォーカルが重なる様は、まさに、21世紀の進化したパンクの形態ではないかと思わずにいられない。Roxy MusicやSoft Cellが好きな人にお薦めな音楽です。
こんな感じで、2017年は面白い音楽を数多く見つけてきいておりました。
再発ではなく、この1〜5年の間に買いそびれていたものも入手して聞くことができました。
その辺りは、また後日。
それでは、次に行きましょう。
日本のものは、実に多くの素敵な作品に圧倒された一年でした。
年始から年末まで、あまりに多すぎる。10枚では無理。
アルバムだけでは面白くないから、シングルも含めて。
SLIP HEAD BUTT / インサート(Break The Record)
ZAY / Cry For The Moon (ZAY-NIN)
Discotortion / 影切 (歪音)
Nepenthes / Confusion (Daymare)
ENDON / Through The Mirror (Daymare)
Boris / Dear (Daymare)
Storm Of Void / War Inside You (Hostess)
鐡槌 / 激鋼 (Diwphalanx)
VA / Steel Evening Silent Floor (Hard Core Kitchen)
Trill / Lie (MCR)
Co/SS/gZ / 録音鬼第三部 (TASTE)
The Knockers / Knockin’ Blues (Straight Up)
Stupid Babies Go Mad / Longvacation (Diwphalanx)
Slight Slappers / Sweet Power Violence (Break The Record)
Nibs / Toward The Glow (Cornucopia)
このようにリストにすると、日本の”うるさい音楽”が充実していたことが良くわかる。
個人的な好みと、完全に一致するような至福な一年だった。
年初に、SLIP HEAD BUTTを聴いて、この年のモードが完全に決定してしまった。
このアルバムは、10年に一度出会うことが出来ると良いと思えるほど、体に染み込んだ。
ZAYは、海外のバンドに求めている世界を、理想的な形で表してくれ、衝撃を受けた。
何しろ、書き出すときりが無いくらい”幸せ”っていう言葉がピタリするような作品に出会えた一年。
2018/1/29
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