第280回
世の中知らないことばかり の巻

2020年の2月までは、毎週のようにライブに通っていろいろなバンドを観ていた。
自分の知らないバンドとの出会いも多くあった。

ところが2020年3月以降、自宅にこもる日々が続き、それこそ夜間外出禁止令みたいな状況になってしまった。
少しの期間だけ我慢すれば、従来の生活に戻ることができると情報発信されていたので、信じていたら、2021年の夏になっても状況は変わらなかった。
今は、2021年の秋だ。

そのような状況下の今年5月、一枚の音源に出会った。

チラシに書いてある文言は、
”2021年。想い描いた活動が出来ないバンド、現状打破し維持し続けているライブハウス、親愛なる友、日常生活が変化する中でも変わらずパンクを愛して止まない貴方へ捧ぐ。”

DEAD FISH BOYSの2ndアルバム『Dedicated to unbreakable wish』がその作品。

リリースは、Straight Up。そう、北海道は札幌の3人組(ギター、ベース、ドラム)のバンドだ。
彼らのライブは、まだ観ていない。

実は、ファーストアルバム『Return Of The Everlasting Youth』(2018年)は既に聴いていて、ギターの鳴り方がHusker Duみたいだなと、かなり好印象が頭の中に残っている。

ジャケットに写るメガネをかけたドラマーの表情が、こちらの心をつかんだ。

この、2009年から2017年までの、過去作品をまとめた16曲は勢いがある。
とくにファーストミニアルバム『Lazy Life Strike Back』(2016年)の5曲〜12曲は、スラッシーでイカしている。
インストの9曲目「Stick Out」は、土煙が襲ってくるような雰囲気があり、『Cat Scratch Fever』の頃のTed Nugentをハードコアーパンクで再現しているかのよう。

同じ北海道(こちらは苫小牧)の3人組、NOT WONKの『Laughing Nerds And A Wallflower』(2015年)と同じようなギターの鳴り方をしているんだけど、DEAD FISH BOYはその音が粗削りで、もっとハードコアパンクに寄せた強引さが、たまらなく良い。

両バンドとも、アメリカのハードコアパンクをイギリス的な解釈をしたLeatherfaceやMega City Fourといったバンド経由で、自分たちの音楽に取り込んでいるような気がしてならない。
哀愁のある曲展開は、アメリカ一辺倒のバンドには出せない、キメの細やかさを感じる。
ロックじゃなく、あくまでもパンクを軸に持った雰囲気がたまらなく良い。

あえてBob Mouldで例えるならば、NOT WONKがSUGARからソロ初期で、DEAD FISH BOYSは初期Husker Duといった感じ。

パンクバンドって、意識して始めるはずだし、音楽を始めるきっかけにはなると思う。

次第に、激情だけでは成り立たなくなるし、時間が経てば幅広く音楽を聴いて、他の音楽に移行してくのは自然な成り行きだ。
DEAD FISH BOYSは、2006年結成なので15年もバンドを続けているにも関わらず、激しさを増している。

ファーストアルバムの宣伝文章にあるように、”激しい、速い、短い”の3拍子に、”ポップ”が加わったところが、彼らの魅力だ。
15曲で19分強の2ndアルバムは、粗い粒子が飛び交い、次第に渦になる。
以前と同じようにインストも入っていて、ポストハードコアな12曲目の「Break A School」は、『Burning In Water』をリリースした頃のMoving Targetsを彷彿させる。

ハードコアパンクのアルバムに見えないエモなジャケットも、想像力を掻き立てる。

このように素敵な出会いがあるから、世の中知らないことばかりと、思わずにはいられない。

じゃあね。

2021/9/21

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