第283回 ”2021年に聴いた音楽 その2” の巻
先回の続きです。海外のもの。
夏まで日本のバンドをメインに聴いていたから、GAUZEを聴きまくった後に聞いていたものになる。
とはいうものの、年始から良いアルバムは結構出ていた。
2021年夏以降、最も気持ちよく聴いていたのは、『Turnstile /
Glow On』(Roadrunner 2-654149)かな。
アメリカ東海岸の5人組ハードコア・パンクバンドのメジャーリリース2枚目。 何が良いって、ポップなところ。
前作2018年の『Time & Space』にあった、ハードコア・パンクならではのダイナミックさを踏襲しつつ、よりわかりやすいアプローチをしている。
1980年代末に New York Hardcore に Gorilla Biscuits や Burn
のようなバンドが出てきて、次々とシーンを活性化していった時を思い出させるのに十分なインパクト。 Blood Orangeの参加も良い意味で
”クロスオーバー” が成功している。 遊び心が随所に見受けられ、バンドが持つ懐の深さがうまく引き出されている。
アメリカのバンドだと、『The Armed / Ultrapop』(Daymare DYMC-369)もよかった。
アメリカ・デトロイトのバンドらしいです。
ボーナス・トラックが聴きたくて、日本盤を手に入れた。
Daymareのリリースは、海外でごく少数だけリリースされたシングル等をボーナス・トラックで入れてくれるので、嬉しいところだ。
(余談になるが、Touche AmoreのヴォーカルJeremy BolnのサイドプロジェクトHesitation
Woundsのセカンドアルバムは、Daymareリリースのボーナス・トラックが凄まじかった。)
このバンド、今までデジタル配信メインで、今回が初めてCDのリリースになるらしい。 内容は、ハードコアパンクだけど、やっぱりポップだ。
ConvergeのKurt Ballowが関わっているだけあって、エクストリームな音だが、不思議なほどポップな肌触り。 Daughters
の『You Won’t Get What You Want』 や Endon の 『Through The Mirror』
を次に聴きたくなるような激しさも魅力。
イギリスものは、2021年も良い作品が多かった。
『Dry Cleaning /
New Long Leg』 (4AD 4AD0254CD) 『Black Country, New Road / For The First
Time』(Ninja Tune ZENCD269) 『Squid / Bright Green Field 』(Warp
WARPCD314)
3バンドともファースト ・アルバムです。
Dry Cleaning
は女性ヴォーカルを擁した4人組。 ポエトリー・リーディングのようなヴォーカルが特徴で、バックを固める3人の男性は一聴しただけで ”4AD的な”
と言いたくなるような音作りをしている。
Black Country, New Road
は男女7人組のバンド。
初めて聴いた時に連想したのは、イアン・カーのニュークリアスとか1970年代のブリティシュ・ジャズロックのバンドたち(比較して聴くと全く違うけど)。
もっと、モダーンでポスト・パンクというかポスト・ロックのニュアンスが強かった。
なんで連想したのかといえば、”ロックだジャズだというジャンルの境界はないんだよ!” っていうところ。
Squid
は男性5人組。 どことなく1980年代頃のポスト・パンクの匂いがプンプンしていて、聴いているうちに引き込まれてしまう。 Talking
Heads や 99レコード のバンドを聴きたくなってしまう、恐ろしい作品。
上記3枚は、2021年のイギリスを代表するような作品だけど、他にもまだまだあります。
『Snapped Ankles
/ Forest Of Your Problems』(Leaf BAY 126CD)
イースト・ロンドンの4人組(?)の3枚目のスタジオアルバム。 紹介文にCANやThe Fallが必ず出てくる。
なんとなくキテレツなところがその系譜になるんだろうな。 個人的には、反復するビートとチープな音色のキーボードに反応するから、ESG や
LILIPUT(Kleenex)を次に聴きたくなっちゃうんだけどね。
『Arab Straps / As Days
Get Dark』(Rock Action ROCKACT137CD) スコットランド・インディーズ復活です。
こんなアルバムが聴きたかったと思わずにいられないような、イギリス臭、スコットランド臭が強烈な、落ち着いた良いアルバム。
『Gruff
Rhys / Seeking New Gods』(Rough Trade RT0127CD)
スーパー・ファリー・アニマルズのフロントマンの7枚目のソロアルバム。 ポップで気持ちが良い。
どの曲も1970年代のアメリカン・ロックなイメージ。 トッド・ラングレンとかスティーリー・ダンとかストーリーズとかいろいろ思い出す。
次の2枚は、1980年代から1990年代に熱心にイギリスのインディーズを聞いていた人なら、琴線に触れるに違いないような作品。
『Hamish Hawk / Heavy Elevator』(Assai ASSAI009CD)
エジンバラのシンガー。 BBC6を聞いていたら、なんか聞いたことのあるような音楽で、なんとなく ”懐かしいなあ”
と思っていたら、この新譜でした。 スコット・ウォーカーやディバイン・コメディーを思い起こさずにはいられない上等なポップスです。
歌い方が、ちょっと憂いのあるイギリスのシンガーならではの湿気を感じることができて、”紅茶とショートブレッド” が欲しくなります。
『Ed
Dowie / The Obvious I』(Needle Mythology NEMYCD008)
ロンドンのシンガー・ソングライター。 経歴のある人らしいですけど、全く知りませんでした。 名前がドウイなので、”ボウイじゃないの?”
ぐらいの感じでした。 聴いたら、もう直球のどストライク!こんなのティアーズ・フォー・フィアーズのファーストアルバム以来の衝撃。
ジュリアン・コープのファースト・ソロアルバムに匹敵する、理想系のポップス。
見た目はさえないおじさん的な風貌だが、デペッシュ・モードのようなエレクトリック・ポップが気持ち良い。
他には、お気に入りのバンドのリリース。
『IDLES / Crawler』(Partisan
PTKF2014-2) 『SHAME / Drunk Tank Pink』(Dead Oceans
DOC204) IDLESは新たなステップに突入。 SHAMEのセカンド・アルバムは時代を反映して重たくなっている。
最後に、まだシングルしか出していないけど、とびっきりのバンドと出会った。。
『Folly Group / Awake
And Hungry』(So Young SOYOUNG001) ロンドンの4人組の12インチ、6曲入りシングル。
Delta5 や Gang Of 4 といったリーズのバンドの音、プラス、Medium Medium
を思い出させるようなファンクさを併せ持っている。 硬質でひんやりとした音作りはイギリスのバンドならではのもの。 B面3曲目の「Sand
Fight」は、2021年のベストソング。
こんな風にして2021年は、激しい音とポップな音で一年を過ごした。
新しい出会いは刺激的だ。 2022年はどんな出会いがあるんだろう。 楽しみ!
2022/1/10
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