プロフィール
佑天寺うらん
イラスト、文章、プロレス、モデル、写真、風俗嬢。只今DDTプロレス練習生。自分の恥を必要以上に晒す傾向のある生粋のマゾ。
http://www.uran.org/

VOL.3

1人で家に帰るのが寂し過ぎて、雨のパラパラ振る中、歌舞伎町のさくら通りの入り口のセブンイレブンの屋根の下で、かたっぱしから知人にメールしてた。

この寂しさを埋めてくれるのは誰だろう。

メールはすぐには返ってこなくて、だけど私はその時間を待つ事も出来ない位、もうそこはとんでもなく寒くて寂しくて1人きり。

だけど、陽子さんが秋彦君が、私を可愛いと言ってくれるからって自分に言い訳して、私は雨に濡れながら、寒いなと思いながらそれでもケータイをずっと眺めてた。

メールしてるのが陽子さんでも秋彦くんでも無いけど、そこに罪悪感が無かった。

雨が革のブーツを濡らしてブーツを買ってくれたあの知らないおじさんを思い出した。

雨の音と車の音と沢山の雑音と、そして決定的なのは寒さと寂しさの中で諦めて1人しょんぼり帰ろうとしたらメール音が鳴った。

「今日は誰も居ないからヒマならおいでよ」 

すぐに甘えたメールを打ち返しながらタクシーに乗り、私はそこに向かった。

「すぐいくから玄関あけたらそこでだっこして」

タクシーの中、思い出したのは陽子さんでも秋彦くんでも、これから向かう先の男の人の事でもなく、ただ抱き締められた時の体のきつい感じだけだった。

タクシーの中さっきセブンの前で打ったメールの返事がどかどかと送られて来た。

だいじょうぶ だいすき なかないで いかないで記号だけの言葉を、目を閉じて頭に埋める。

その時思い出していたのも、やっぱり抱き締められた時のきつい感じ。

私はおかしいんだろうか。

頭の中の対象は、すべて人格がない。抱き締めてくれる手が私の内側に向かってくれていれば、それでいい。

タクシーが止まった時、今日は眠れるってやっと思った。

2003/3/25