第2回
家族円満はあり得ない

東京に来たばかりのころ、真っ白なネコを2匹もらってきて飼っていた。

雄の兄弟ネコだったのだが、そのうち1匹は生後数カ月で交通事故で死んだ。
1匹ではかわいそうだと思い、同じ真っ白な雌ネコをもらってきた。
雄ネコはやがて筋骨隆々の立派なネコに成長し、近所ではボス格にまでなった。
去勢をしなかったので、子ネコができた。しかも6匹も。そしてまた、6匹とも真っ白。そっくりな顔をしたかわいいネコの親子...の図は幻想に終わった。

ある日のこと、子ども6匹+親2匹の夕食タイムとなった。ご存じですか。母ネコは、涙ぐましいことに、子どもが食べ終わるまでは、自分は絶対に食べようとしないのです。器を分けてやっても、子どもが食べているところが見えていると、食べようとはしない。そこで、母親には別の部屋の、子どもが見えないところでごはんをやっていた。

別の部屋では、体格も心も大きい父親と、そのかわいい子どもたちが水入らずの家庭団らん...なはずがなかった。子どもは、同じものしか入っていないのに別の器にはもっとおいしいものが入っていると思うのか、自分の器にとどまってはおらず、あっちこっちと物色しながら食べ散らかす。もちろん父親の器にも進出を計る。

父親は子どもにやってなるものかとウゥゥゥゥ...とうなって応戦する。しかし子どもはたじろがない。6匹もいるものだから、次から次へと違うチビが父親を脅かす。

そこで父ネコがとった意表を突く行動!

彼は自分の器の中にガバッと顔をつっこみ、子ネコが食べられないように器をふさいでしまったのである。そこには寸分の隙間もなかった...
ネコというのは群をつくらない動物なので、基本的に子どもを生まない雄は単独行動が好きなのである。そして、食い物だとか飼い主だとか、自分のテリトリー内にあるものは子どもとだって張り合って、渡すまいと必死になるものなのだそうである。
なんだか情けなくなった飼い主は、翌日から父親と子どもを別の部屋で食べさせることにしたのであった...そしてこの父親、精神年齢の低さはただものではなかったのです。

もう1つのエピソードは次回。

2003/1/16


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