第3回 |
前回は話を「続く」にして続編が今月、という流れ…のつもりだったのだが、ごめんなさい、気が変わりました。 世の中、こんなもんよ。 実は公表しておかなければならない重大な話を思い出したのである。 私は大阪の出身である。したがって大阪人である。したがって、おもしろい話をすると、東京の友人・知人からは必ず「あ、話つくってる」と言われる。 したがって、私の話はどれもネタということになってしまう。 この話は昔昔、関西の友人から聞いた体験談である。聞いた私は話のウラをとったわけではないので、本当かどうかは知らない。 ただ、おもしろいだけである。だから、「またネタじゃん」とは言わないでもらいたい。 その友人(仮にCちゃん)は中央大学に通っていた。ある日Cちゃんは試験を迎えていた。ほぼ徹夜状態のやっつけ仕事で勉強し、朝、大学へと向かった。私は行ったことがないので知らないが、中央大学というのは多摩にあって、なにやら坂をずんずんずんと上って行くらしい。 「ん?」彼女は目をこらした。 「なんだ、ダチョウか」…………「ダチョウ!?」と、よく見れば見るほど坂の終わりにたたずむのはダチョウ。 「なんでこんなとこにダチョウ!?」しかも、彼女は鶏肉が食べられないほど大の鳥嫌い。鳥肌をたたせながら彼女はダチョウをよけようと、そっと左へ寄った。すると、真正面から彼女を見据えて、ダチョウが同じように左へ(彼女から見て)寄る。 ああ!不幸なことに、それを追ってダチョウも走りはじめた…………!!! 世界でも有名なほど俊足のダチョウ!!おそらく一生で一番の恐怖と戦っているCちゃんの腕を、学友がつかんで横道へ引っぱり込んだのは、何秒もたたないうちであったのだろう。ダチョウは気にせず、坂を一気に走り降り、去って行った。 その後、大学構内では多摩動物公園の飼育係・職員が総出で、脱走したダチョウの捕獲作戦がとりおこなわれたらしい。 この話には信憑性がある。その所以は、ダチョウが人間と同じように左右へ動いた、という下りである。(下り、というのは、これは私がつくった話じゃなくて、Cちゃんに聞いたままを書いてるから。) ダチョウもそうだし、オーストラリアのエミュなどのダチョウの仲間の鳥はみんな、気に入った人間にはついてまわって、人間が左へ行けば左、右へ行けば右、という行動をとる習性があるのだ。思うに、卵からかえった鴨が最初に目に入ったものを親と思いこんであとをついて行く、あの例の「刷り込み行動」の延長なのではないだろうか。が、鳥嫌いのCちゃんはそんなこと知ってるはずもないから、こんなふうに話は作れないのだ。
なんだか、ネタじゃないネタじゃないと言えば言うほどドツボにはまりそうだが、20年くらい前に中大に行ってた人がいたら、ウラをとってみてください。 2003/2/24 |
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