第254回
2018年よく聴いた音楽 : 海外編の巻


2018年は、イギリスのバンドが面白かった。

何しろ、次々と新しいパンク・バンドのリリースがあった。

今イギリスのパンクシーンは、ロンドンを中心に数多くのバンドがいることは 第249回 で書いたとおり。

1977年のパンクを体験している身としては、次々と話題に上がる ”パンク復活” に否定的な気持ちが強かったのだが、偶然にも新世代パンクの旗手である Slaves の登場を2013年にライブで体験してしまい、ノックアウトされてしまった。

その後は、雪崩を打ったかのように次々と登場してくるバンドのライブを見たいがために、毎年のように渡英するハメになっている。

同世代のパンクファンに説明するならば、パブロックの末期に Dr.Feelgood が登場して、それを導火線に Eddie & The Hotrods のような若い世代に火がつき、Sex Pistols が一気にパンクの波を作っていった1973年から1978年の5年間のようなスリリングな時期に相当するのが、2013年から2018年のイギリスのパンクシーンにあるわけ。

個人的な感覚としては、Sham69、The Adverts、Buzzcocks、999、Generation X、The Lurkers、Magazine、Siouxsie & The Banshees、PiLのファーストアルバムが毎月のようにリリースされていた1978年を彷彿させるような興奮が毎月のように続いていたのが、2018年だった。

それでは、よく聴いたアルバムを紹介していこう。


Shame / Songs Of Praise (Dead Ocean)



サウスロンドン出身の5人組がリリースしたファーストアルバム。

Fat White Family の弟分的な存在といったらよいだろうか。
音楽的には、パンクの匂いがプンプンするイギリスのバンドならではのポップでストレイトなところが魅力。
昨年11月に来日し、新代田FEVER でライブを行ったので、観た人もいるかもしれない。

ライブを見ていて連想したのは、Zones、Sikds、Simple Mindsといったスコットランドのバンド達。
透き通ったギターの音とグイグイと迫ってくるリズムは、初期のパンクが好きな私にはたまらない魅力に満ちたものだった。
ステージングの過激さは、初期の The Members を彷彿させる。
いや、ステージ狭しと暴れまわるところは、日本の Vid Sex みたいだったなあ。
今のイギリスのパンクはこのアルバムを聞けば一発で理解できる。
そう、1977年にThe Clashのファーストがそうだったように。


Idles / Joy As An Act Of Resistance (Partisan)



249回 で書いた通り、現在最も格好良いイギリスのパンクバンドの一つが、2017年のファーストアルバム『Brutalism』に続きリリースしたセカンドアルバム。

Shameより、ポスト・ハードコアな激しい音をしている。
イギリスが抱える様々な政治的な課題(移民、ブレクジット)を題材にしているが、合唱できるようなキャッチーな曲にしてしまうところが、このバンドの魅力。


Slaves / Acts Of Fear And Love (Virgin)



パンクバンドはインディーレーベルから作品を出すことが当たり前になって久しいが、ケント出身の2人組は、Sex Pistols と同じ Virgin と契約をし3枚のアルバムをリリースしている。

今までの2枚のアルバムは、やりたいことが多すぎて未整理なところが魅力だったが、今回のアルバムは焦点を絞っており、良い意味でパンク・ロックしている。

ある意味、ストリート・パンクというよりはイギリス的な Oi!パンクになっている。


Sauna Youth / Death (Upset The Rhythm)



ロンドンをベースにしている4人組のサードアルバム。

前アルバム「Distractions」はノイジーでキャッチーなパンクが炸裂していたが、今回の『Death』はよりノイジーで刺々しい雰囲気に満ちている。

乾いた感性でファーストアルバムの頃の Soft Machine を蘇らせたかのようだ。


Dream Wife / Dream Wife (Lucky Number)



何しろ格好良い女性3人組(プラス男性のドラム1名)。

溌剌とした若さ溢れるライブに接した後では、ポップに作られすぎたきらいのある、このアルバム。少し欲求不満に陥ってしまうが、Mo-Dettes みたいにキュートな風情があり、何度も聴いていると知らぬ間に虜になってしまう、中毒性がある。



上記5枚の他にも、いかにもイギリスらしいポップでひねた音楽が心を掴んだので、アーチストとアルバム名を。


★ Goat Girl / Goat Girl (Rough Trade)
★ Insecure Men / Insecure Men (Fat Possum)
★ Gwenno / Le Kov (Heavenly)
★ The Lovely Eggs / This Is Eggland (The Lovely Eggs)
★ Django Django / Marble Skies (Because)


こんなところが、2018年によく聴いた海外の音楽だ。

久しぶりに、イギリスの音楽一辺倒になっている。

今は便利な時代なので、上記のアルバムに興味がわいたら、ネットで聞いてもらえると嬉しいところだ。
できれば、ライブ映像を見てもらえると、より理解が深まると思う。


じゃあね。

2019/2/17

 
the原爆オナニーズ ライブ予定

4月6日(土)大阪 パンゲア
agartha20190406
共:ember、Burl、The→China Wife Motors、
開場18:00 開演 18:30
前売り2500円 /当日 3000円(別途ドリンク代) 
■問合せ:パンゲア 06-4708-0061

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4月20日(土)名古屋 池下 Club Upset
パンクでぶっ飛ばせ
共:GAUZE、Killerpass
開場 18:00 /開演19:00
前売り 2,500円(別途ドリンク代) 
■問合せ:Club Upset 052-763-5439