チーズの話


子供の頃食えなかったのに現在は食べられるものの筆頭にチーズがある。

どうも給食のチーズが不味かったらしい。酒の席で食べてみたら美味かった。
それからいままでのチーズ不在時代を取り戻すかのように食べた。

輸入物をわざわざ自分で買ったりして。まあ経済的にもそんなに高いものは食べられないけれど、それでも高いカマンベールチーズは美味しかったりする。


さて話は約十年前にさかのぼる。

この頃の私は、すでにチーズが好物になっていた。当時、池袋で働いていた私は、ふと職場の近くの立ち食いそば屋に入ってみた。そこのメニューに、こう書いてあった。

「天ぷらチーズ」と。

一瞬、我が目を疑った。これは何だろうか。チーズの天ぷら?それが、そばやうどんの上に乗っているのだろうか。その日は勇気が足りず、たぬきそばか何かを食べたと思う。
意を決して数日後。

「てんぷらチーズ…ください」

チーズは好物になったものの、相手は天ぷらだ。ちょっとためらう。
「そばとうどん、どちらで?」と店員さん。
「あ、そばで」
そうだ。天ぷらである前にそばであった。期待と不安に胸は膨らむ。
その製作過程を見てまた驚いた。普通のカキアゲの上にスライスチーズを乗せて、熱いそばつゆをかけている。するとチーズがとろける。そんなものが目の前に。
とろけたチーズがカキアゲとそばの麺に絡み付いている。

「???!!!」

言葉にならなかった。自分の経験上、こんなものは始めてだった。
意を決して食べてみた。

美味かった。

不思議とそばつゆの醤油と、ダシの風味とチーズの相性がいいのだ。気がつかなかった。

それからしばらく天ぷらチーズそばを食べ続けたがある日、そのそば屋はなくなってしまった。いまはジュンク堂という本屋がある。

それからというもの、カップそばを食べるときにスライスチーズを入れて自作しているのだが、周囲の人はみんな気味悪がって真似てもくれない。

美味いのになあ。

2004/2/27