プロフィール 佑天寺うらん イラスト、文章、プロレス、モデル、写真、風俗嬢。只今DDTプロレス練習生。自分の恥を必要以上に晒す傾向のある生粋のマゾ。 http://www.uran.org/ |
vol.4 行き慣れたとはまだ言いづらい恵比寿路地をしばらく歩いた場所にある大きなマンションのエレベーター前まで着いた所で、ふとしゃがみ込む。 自分で起こした事なのに、たまに思うこの疑問は何だろう もう子供じゃないし、自分が一体なにがしたいんだなんて事。 なんてきっととてもくだらない事を。 一人で青春?だけど、しゃがんでいたら何かとても苦しくなってくるんだ。 心臓が、バクバクを、音をたてる。 聞いた事の無い雑音に耳をふさぐ。 雨は霧になり、ガラスの外の景色を曇らせる。 人通りは少なく、時々どこかを車が走る音と、そして私の心の雑音だけが。 人に会えると分かった時点でふと一人になりたくなる事はよくある。 だけど結局私はいつも、玄関のベルを鳴らす。 助けて。 助けてもらえるなんて、いつまで思えていられるのかな。 一人ブツブツと、エレベーターの前にしゃがんでそのうち首をたれて、両耳で耳をふさぎ、自分は何も悪くない、ってそう思おうとした。 陽子さん、秋彦くん、思い出すのはいつもそこに居ない誰か。 ふとエレベーターが空いて、驚いた顔で長野さんが出て来た。 『なにやってんのっ』驚いた、そんな顔しないでよ。 『寒い』私は、一瞬笑う。 自然に出された長野さんの右手にひっぱられる様につかまってエレベーターでは胸に顔を埋めて見ない見ない見ないって呪文のように。 何も見ない。 悲しくなるから。 わたし、何やってんだろうって。 玄関開けた時、雨でびしょぬれな自分に気がついた。 皮のブーツがびしょぬれ。足も髪も。顔も。 泣いた?覚えてないけど、とても寂しかったのはほんと。 『一緒にお風呂入る』 ちょっと待ってな。と言われて部屋に残される。 生活感のないキッチン。 その割にヘコんだソファー。 沢山の机。壁に張られた無数の紙。 既婚者が事務所に女を連れ込む典型的な、時間、タイミング、優しい態度。 だけどそんな事どうでもよくて ただ、あったかいお湯に、優しいだけの男の人と湯気の向こうに現実を隠して 『ねぇ明日、何時に人来るの?』 『朝から撮影なんだ、俺も』 分かった。それ以上聞かない。 交渉成立。 今夜は眠りたいだけ。 優しくしてね。 今だけは。 2003/10/31 |