渡辺正 連載コラム#29 フジヤマで売ってないレコードたち。
この日本でシド・ヴィシャスは各都道府県に大抵一人は居るが、同じシドでもシド・バレットはイギリスの病院に一人しか存在しない。 いっぱい居てもらっては困る人なのだ。 ピンク・フロイドの成功をまっとうに享受できずに、狂って精神病院に今もいるのかシド・バレットよ。このソロ第一作目で聴いた切なさに、今も心揺らぐ時がある。きっとポップスターになりたかったんだろう、そのメロディの美しさよ。 たまに聴くよ、あんたのこのレコード。B面は怖くて切ないね。骨と皮しかないような録音にヒリヒリした無力感を抱かせるよ。凄いレコードだね。 ヒプノシスのジャケットデザインもゆらゆらしてて怖いね。謎を提示する不思議なレイアウトだね。 いつも元気のない時に聴いてしまうよ、このレコード。そして後悔、切なくて。解かってんのに聴いてしまうのはなぜだろう。 このレコードを聴かなくて済むよう、わたし早く元気になろう。 2002/2/9 |