渡辺正 連載コラム#36

フジヤマで売ってないレコードたち。


hirth martinez/hirth from earth (warner bros./LP)

ザ・バンドのロビー・ロバートソンプロデュースでチャック・レイニーがベースを弾いているという一点で「他に買いたいものないし、これでも買うか」といった、たいした期待もない買い方で求めた一枚だったが、その後大切な一枚になったレコード。

とびきり大切でもないが、ないとなにか物足りないモノ。

友達関係に似ている。

以前、死ぬまで知り合いで良き友人でいたい、といった人がいた。私に異存はないが、付かず離れずの関係でいる事に、無理してた。

いつも一緒に居たかった。

これから何年生きるんだろうと思ったら、長くも無いし、好きなことにめいっぱい生きるに決めた。

めいっぱい生きるという事は難しいぞ、人それぞれ個体差がある。

もうその友達は友達ではない。会いたくも無い、会ってしまえば、付かず離れずのお友達の成立。
そんな人ではなかった人だから、もう会わない。どっかで会っても知らん顔さ、それを優しさというのさ。

この年になって友達のあり方を勉強している、まだまだあまちゃんだ、私。
ハース・マルチネスのこのレコードに教えられる事がある。たいしたモノでもないが、何気ないものの中にゆったりとした優しさと、本当の心地よさを。

付かず離れずの関係にうまく付き合えるようになったら、鬼に金棒だ。おれは鬼か!

2002/4/25


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