渡辺正 連載コラム #46

フジヤマで売ってないレコードたち。


AC DC/let there be rock (atco/LP)

ロックのイメージを体現してる人はだーれ?と聞かれたら、私は古いタイプの人間だから迷わず「AC/DCのボン・スコット!」と即答する。

このヴォーカリストの突き抜けぶりは潔い。左の尻に「AC」右の尻に「DC」と刺青してる、もう感動もんのアホ。ロックかくあるべし。私もケツの左に「フジ」右に「ヤマ」とでも刺青したら、ロックスターだな、もう。いっちょやりたいもんだが、アホに成りきれない中途半端な私。

ギターのアンガス・ヤングも笑わせてくれるが、かなりのインテリと見た。第一ギターが弾けるなんてインテリの証拠さ。そこいくとボンちゃんは荒くれだから、ギターなんてまどろっこしいと思ったかどうかは定かではないが、声だ!まずは裸一貫出たとこ勝負の武器いらず。人生に、ステージに、身体使って声出して、リミットいっぱいいっぱい。そんなヤツを見てれば、バンドは、音楽は、爽快に引っ張られる。ロック・ヴォーカリストとはそういう吸引力を持つのが宿命なのだ。

「whole lotta rosie」

このイカした曲をエンドレス・ダビングしたカセット・テープを、出たばかりのソニー・ウォークマンに詰めて、エンジン改造したツー・トーンのヴェスパで爆走しつつ、ヘッドフォンで聴く。あれはいつの頃だったかなぁ、今より百倍ロックでしたね私。もっともヘッドフォンじゃなくて、でっかいラジカセしょってフル・マックスBGMで走れば千倍ロックですが、そこまでのアバズレじゃない。

尻に刺青出来ない意気地なしの私は、せめて男気見せる為、バイクを改造し、ヘルメットにはウォークマンを固定装着出来るギアを作りヘッドフォンでAC/DCを聴く。見た目充分変な人に映ってたでしょうが、本人はマジでした。気持ちよかったよ、30代の青春。男の青春は馬鹿まるだし。

そんな、オバカさんなオジさんだったから、青山246爆走中に勿論事故りました(笑)。曲がりきれず分離帯に激突。100メーターぐらい飛んだ感覚。人だかりが出来て恥ずかしかったです、しばらくして猛烈に出血してきたのにも驚いたし、どんどん恥ずかしくなってきた。なんで私はああも恥ずかしかったんだろう、意識も遠のいて行くのに・・・。妙なヘルメットを付けて事故ったマヌケと見られるのが、恥ずかしいと思ったのかも。まだまだロックじゃありませんね、私。

堂々と血まみれにならなくちゃ!

聴いていたのは勿論AC/DC「let there be rock」。

2002/9/12


コラムindex