渡辺正 連載コラム#56 フジヤマで売ってないレコードたち
このレコードは彼女のファーストアルバムですが、発売当時(1975年)彼女の良き理解者だった写真家の故ロバート・メイプルソープによって撮られたジャケット写真が力強い。彼女の凛とした佇まい、意思のある視線、全てにおいて無駄が無い。 作品内容にも贅肉がない。 元々ポエトリー・リーディングに強い意思をみてとる人だと、実は思ってたんだ私。「バードランンド」における静かな説得力に心打たれたから。あまりR&Rした曲には私の心に響くものが希薄だったし。パテイ・スミスの本領はR&Rじゃない、と思ってずっと過ごしてた。だから、このレコード以降はある程度距離をおいてた。 オレがどう思おうと、どうでもいい事なんだけど。 イラク制裁戦争に対する反戦集会が、当の戦争推進国アメリカのどっかで行われてた。TVでそのニュースをなにげなく見てた。 R&Rでガンガン飛ばして歌ってる女性歌手がいた。 パティ・スミスだった。 何気なくパティ・スミスを見るなんて驚いたが、確かに彼女。クールでシニカルな人だと思ってたから、熱い声に驚いた。 彼女は僕の中では、いつもアジテーターであり続けているのに感謝した。レコードでは読み取れない素敵なR&Rだった。 それはそれとして、アメリカは戦争に突入するのか、それでいいのか? おれは、ぼんやりパティ・スミス見て、感動してていいのか? 2003/1/22 |