渡辺正 連載コラム #59 フジヤマで売ってないレコードたち。
マリア・マルダーの歌う「ジョージア・オン・マイ・マインド」の望郷感はいい。 このレコードの白眉はジェフ・マルダーが「ブラジル」を呑気で、いなたく歌った後、マリア・マルダーが清廉に歌い出す「ジョージア・・・」の切なさ。切ないと言えば、このレコード自体も切ないぞ〜ッ。どう話そうか?まずは、私の現況からお話しましょうね。 永年借りてたアパートが立て替えとかで、追い出されたまま、仕方なく新しいアパート決めるまでフジヤマ店内をねぐらにしてるんですが、勿論私物の荷物もフジヤマに置く事になりますわな、鍋とか棚とか。一番始末が悪いのが膨大なレコードですわな。で、店だか自宅だかケジメのなくなった私は、ある日深夜モノに埋もれる生活にパニックになったのか、思い切ってそのレコードを店で売ってしまう暴挙に出たのです。 今度のアパートではモノの無い、クリーンでシンプルな生活を目指す事に決めてたので、フジヤマに山積みになってる私物レコードが鬼に見えてしまったのですね。とりあえず、LP50枚ぐらい入る箱を5箱ばかり無造作に店出ししたら、売れること、売れること・・・。ま、500円とか800円とかで適当に売ってるからだけど。先日また5箱出したら、その中にこのジェフ&マリア・マルダーのLPがあったんですね。ハッキリ言って、このレコードはそのユル〜イ感じの傑作アルバムなんですが、そんなこちらの思いなんて我関せずで、若いお客さん、この傑作手に取りカウンターに持ってきて私に聞きます「これ、いくらですか?」私、このレコードを吟味もせず店頭に出してしまったから後悔。 「レア盤だけど、隠れた名盤なんですよ!だから、そうだなぁ・・・」と、まるでレコード屋のようなセリフ。って、フジヤマはレコード屋だけど。2000円って言いたかった(それでも安い!)けど、恥ずかしがり屋さんだから、言えず。「1000円で、どうでしょう?」。 その若いお客さん、なんだか落胆もせず言い放ちます「じゃ、いらない!」続けて言います「ゲオフ アンド マリアって知らないし」 せめて、落胆ぐらいして下さいよ!しかも、ゲオフじゃなくてジェフですよ!と、言おうとも思わない、ただれた私。 まあ、エイモス・ギャレットとかを知ってて、お好きな人に買ってもらいたいから、こちらは別に構わないんだけども、なんだか淋しくなりました。 1000円でも売れない「POTTERY PIE」。もう、マリア・マルダーさんに申し訳無いからしまう事にしよう。 2003/3/21 |