渡辺正 連載コラム #63

フジヤマで売ってないレコードたち。


tim hardin/1 ( Verve/LP)

そんなこと云われたって、ダメなものはダメなんだよ。
頑張ってね 生きてね 負けないでね
君に言われなくたって、頑張ってるさ、生きてるさ。
でも、ダメなものはダメなんだよ。

何がダメなのか、さっぱり解らないが、そう書いてある。

私の8ミリ映画のシノプシスまがいのメモ書き。暗い、しけてる、楽しくない。鬱炸裂なメモ用紙、字体は案外力強い。

何度見直しても不愉快だから、映画のコマ割り考えたくない。でも、ついつい暗いもんばかりに話が進み、キッチリしたコマ割り書いてる自分がいる。私の映画は夢がない。笑えない。作る前からガッカリだ。

そう、私は今、私映画を撮ってるのに、やればやるほど冴えない自分にガッカリだ。ガッカリの連続だけど、作り続けてれば何かそのうちガッカリの大家にでもなれるかも。今の気分は、暗い。しけてる。楽しくない。仕方ないねえ、オレ。ダメだねえ、私。

ダメですが、止められないダメを無理に止めることもない。ダメ垂れ流し作業、これは美しくないから、映画にしてコンパクトに形にしよう。形にするダメ。もしかして 『 美しい 』 かも。そのうち、明るく笑えるかも。

俺の映画は、しけた唄歌いの優しい声、ティム・ハーディンのよう。

2003/7/10


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