渡辺正 連載コラム #71
フジヤマで売ってないレコードたち。
leonard cohen/songs of leonard cohen (
columbia/LP)
抜け毛がひどいのよ、50を過ぎてから。
さっきも銭湯で頭シャンプーして驚いたのなんの。頭かきかきできないの、だって抜け毛がバッサリ僕の指に絡むの、いとしの頭髪。
もういやだわ、こんなに抜けて台無しね、僕の美頭。
悔しいから伸ばしてる僕の長髪、ロン毛です。ハゲの人の無理やりな横分けを笑えない僕、このありさまこの体たらく。
行く末は、落ち武者みたいになっちゃうの?僕のヘアースタイル。
こんな僕だけど、素敵でちょっとクールな出来事は作りたい。願ってる。頭の形が微妙に分かってしまえる程に禿げたって、カッコはつけたい50過ぎ。薄い髪の毛大事にしてみましょう。他人の禿げはちっとも気にならないが、いざ自分もとなるとやっぱりね。
悔しいけど僕の昔はすんごく髪の毛濃かったんだもん。う〜んバカ、そんなにジロジロみないでよ、てば。
過去は素敵だったのよ・・・こんな僕でもね。素敵だったけど恥ずかしい事山ほどやったから、どっちもどっち。
そんな髪の毛ボーボーだった頃、当時付き合ってた女の子に言われた事がある。
「禿げてきた時が、付き合う勇気を問われるわよね」
両親ともノンハゲを誇る家系、禿げる要素は全く無いと信じてた私は、笑ってたけど、禿げる前に振られてしまった。どうせならハゲてから振ってほしかった。ハゲのせいにできるから。
レナード・コーエンのファーストの1曲目「スザンヌ」聴いて、50を過ぎた僕は薄くなった頭を嘆いてみたりする。
でももしかして、なんかの拍子で髪の毛バンバン伸び放題になるかも知れないから、ちょっと気を抜かないでカッコつけて今日も頑張ろう。
いっぱい恋をしたし、たくさん笑ったり、ヤケッパチの喧嘩もした。
過去のショボイ思い出引きずって、ふとしたことでどんよりするのに、レナード・コーエンの声を聴くとついついカッコつけたくなる。いっつもシンプルな音しか出さないこの人の作品に勇気づけられてしまう。
このレコードの音はジョン・サイモンがプロデュース。気になる音はいつもこの人ジョン・サイモンと決まってる。シンプル過ぎて深く聞こえてしまうのが魅力。
レナード・コーエンがハゲだったなら、どんなにロマンチックな音楽を作ろうとも、人として彼の望郷は、美しいまでに切なく聴ける。
それにしてもコーエンの頭は禿げないのだろうか。ジャケットの写真は美し過ぎる。
少しばかり禿げてほしい。そしたら僕も俄然元気出る、間違い無い。
2004/6/11
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